◆作品紹介
「わたし」の腕は目に覆われていた。ある時「わたし」は、人面樹の実に「ニン」と名付け、ともに暮らしはじめる。線香の煙が立ち昇り、涙とともに目玉が零れ落ちる――かわいらしくも物悲しい怪異譚。「わたし」はいくつもの目で世界を盗み見て、人々はいくつもの目で「わたし」を睨み返す。どちらが先だったのかなど、もはや知る由もない。ただ、見ることは見せられることであり、見られることは見せることでもある。そこでは常に、互いが互いに視線を取り憑かせ合っている。その応酬の先で「わたし」は何を失い何を手に入れたのか、何を与え何を取り戻したのか。ぜひそれぞれの答えを探してみてほしい。
(編・青山新)