loading

伊藤なむあひ「麼麼んが麼」

伊藤なむあひ「麼麼んが麼」

◆作品紹介

人間と鳩とドーナツ、あるいは「麼」を巡る奇妙な関係性について。およそすべてのドーナツは穴だけを残して食べられるわけだが、その結果として世界には少しずつ、不可知のドーナツの欠片が降り積もっている。ドーナツとは、欠けることによってのみ成立する存在であり、それは穴そのものであるといってもいい。この世から失われたものだけが別の世界に行けるのであって、それは裏を返せば、この世に在るものはすべて、あの世における穴に位置するというわけだ。子供の頃、私の家にあった時計は一時間ごとに異なる鳥の囀りを聞かせるという代物だったが、その中には鳩の声だけがなかった。しかしもしかしたら、時計の中心に空いた軸穴に耳をすませば、それは聞こえたのかもしれない。あらゆるものに穴は穿たれていて、私たちはそれに気づいていない。その穴を、乾いた音だけが吹き抜けている。(編・青山新)

この続きは会員限定です。
無料会員登録またはログインでこの先が読めます。