先鋭的な音楽を送り届けているanon recordsから発表している作品を紹介します。
MON/KU - 『Long、 Long、 Long October』
多彩な電子音のコラージュを駆使し、複雑なレイヤーで構成された浮遊感のある楽曲はまさにMON/KUというしかない独特の質感とシグネチャーを持つが、今作はより彼の繊細なボーカルにフィーチャーした作品となっている。断言しよう。あなたはこの曲を通じて震える光を見出すことになる。そう、長いながい秋(とき)を超えた先にある、冬の光を。(text by てーく)
KYLE MIKASA - 『Trash Metal Gabber』
メタルであってガバでもある。タイトルが示す通り、ただそれだけのものである。「世界で一番速くて重くてうるさくて攻撃的な音楽はどこにあるのか?」と、インターネットや中古レコード屋をやっきになって探し回った経験について、そんなことは当然ながら誰にだって心当たりがあるものであり、そうした過程におかれたそうした人々にとって、メタルであってガバでもあるものの存在を想像してみたことがないと言ったら嘘になる。KYLE MIKASAの「Trash Metal Gabber」。あなたがもしも今なお世界で一番速くて重くてうるさくて攻撃的な音楽をお求めであるならば、あなたがお探しの音は、もしかするとここにあるかもしれない。(text by 樋口恭介)
that same street - 『iARA』
生から逃げたいと思っている。実際に逃げている。死にたいのとは少し違う。人生に満足できず、身体が重くなって満足に動けなくなっているあの時、自殺とは違う消極的な形で自分の生から逃げている。
今回anon recordsでリリースするのは、ハードコアバンドmoreruのメンバーDexによるソロプロジェクトthat same streetの一曲だ。軽やかなギターの音色と初音ミクの歌唱は、私を海が見える砂浜まで連れていく。それが幻でしかないことを私は知っている。初音ミクは私の生を肯定したりしない。初音ミクは私の生を否定さえしない。初音ミクは私の生を救わない。
それでも、幻が幻でなくなる日を私は夢見ている。幻が幻でなくなることのない日もまた私は夢見ている。日々逃げたいような生を生きている誰かの救いとして、この曲が聴かれて欲しいと思う。(text by ろっとん)
kasane vavzed - 『Sub question』
生と死、愛と憎しみ、救済と裏切り。その選別に、ある者は生き残り、ある者は篩い落とされる。そう、単にただそれだけのことだ。だが、ただそれだけのことが、日常の裂け目に亡霊のように、執拗に回帰する。
3分43秒、スリップするノイズの向こう側から突きつけられる苛烈な問いに、あなたはどのように応えるだろうか?(text by てーく)
UNCIVILIZED GIRLS MEMORY - 『Self-Punishment Device』
/imagine prompt: "岩に沿って流れる夜の川。足元を濡らしながら歩いてゆく。視界を覆う霧が、とつじょ広間のように拓ける。そこには数々のオーパーツが浮かんでいた。痙攣する時計。真鍮のピアノ。エジプシャンな紋様。振り子がぶら下げられた天秤。ラカンの銅像。それらが織りなす暗いコラージュを前に、処女が立っていた。ナイフのような音が飛来する。「人間はみずからの鼓膜を自罰する装置なのだ」"(text by 永良新)
Shuta Hiraki - 『Graveyard』
異界の夜に紛れ込んだようなノイズ・ドローンから甘美な静寂へ。刻々と移り変わる楽曲は、Shuta Hirakiの作品に通底する、どこかロマン派的な情感をたたえた独自のテクスチャーを聴き手によく伝えるだろう。
「…夜が来たのだ。この驚くべきものが、人の世の異郷の客として、山々の背から、悲愁をおびて壮麗に。…」(W・G・ゼーバルト)
(text by てーく)
灰街令 - 『Memorized Memorandum』
基本的にはコラージュと言えるだろう。文脈から剥ぎ取られたメモのような音素材たちが並べ立てられ、新たな描線を試みる。独立した音の粒子が聴取によって構造化され、持続する耳の記憶の中で建築的な立体性を帯び始める。そして私たちは語り始める。リスナー一人一人はそれぞれのメンタルモデルに従うアナロジカルなサウンドスケープを立ち上げているに過ぎないのに、それを普遍的な感動と呼びたがる。私たちは同じ音楽を聴いているのにまったく異なる風景を見ている。灰街のコラージュは美しい記憶を呼び覚ますとともに、そうしたアイロニーを指摘する。(Text by 樋口恭介)
今後もanon recordsは先鋭的な視点で、音楽を発信していきます。






