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【anon interviews#02】十三不塔「作品集発売記念インタビュー」

【anon interviews#02】十三不塔「作品集発売記念インタビュー」

〈anon press〉から電子書籍第11弾となる、『13 十三不塔作品集』が発売されました。ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞者であり幅広い媒体で活躍する十三不塔が描く『13』の短中編の作品を収録しています。『ベストSF2022』(大森望・編)に収録された『絶笑世界』をはじめ、正統派SFからサイバーパンク、初掲載のエッセイまで、ジャンルを軽々とまたぐ作品集となっています。

今回は、発刊を記念して著者インタビューを掲載します。

 

【目次】

  • イグナシオ
  • 玄武
  • 絶笑世界
  • 移民の夏
  • おかしなおめかし
  • インドア大陸
  • 猿王眷恋行
  • 白蛇吐信
  • ドゥクパ・クンレー二世の華麗なる不始末
  • ウェイク・イン・クローゼット
  • 塹壕熱
  • スウィーティーパイ

――今回anon pressから作品集が発売されることになりました。まずは、十三不塔さんのプロフィールをうかがえれば。

 

十三不塔(以下、十三):愛知県に生まれました。第8回のハヤカワSFコンテストの優秀賞を貰ってデビューしました。いろいろと振り返ってみましたが、輝かしい業績のない人生です。小学生のとき入院中に娯楽がなく、本を読む習慣がつきました。どうして小説を書き始めたかはっきりした記憶がありません。

ただ、最近EYEDEARさんから出たばかりの『書くしか』というエッセイアンソロジーにも書いたのですが、村上龍の『コインロッカーベイビーズ』を読んだときは衝撃を受けました。それから村上龍の作品を読み漁り、いつしか彼と同じ群像という文芸誌でデビューしたいと考えるようになったので、あれがきっかけと言えるかもしれません。

 

――デビューは、群像新人文学賞でしたよね?

 

十三:群像からデビューはできましたが、そのあとが続きませんでした。純文学作家としては芽が出ないままいったん小説からは離れることになります。それから随分と時間を経てエンタメやSFを書きたくなりハヤカワのコンテストに「十三不塔」というペンネームで応募しました。

 

――ハヤカワSFコンテスト優秀賞の受賞作品である中華サイバーパンクSFの「ヴィンダウス・エンジン」を筆頭に、様々な媒体で、幅広い作品を執筆されています。今回の作品集も、単独の作品集では異例となる「13」もの中短編が掲載されています。

 

十三:13編は多いですね(笑)ペンネームの十三にあやかって無理くり揃えました。

とはいえ掌編も多いので全体のボリュームは膨大ではないと思います。ここで初出の媒体やメディアをあげさせて頂くとcall magazine、Sci-Fire、BEKKO、メルキド出版、人間六度さん主催のふわふわでとてもえらい、5G、不存在科幻などがあります。あともちろんanon pressに掲載したものもあります。web、ネットプリント、インディー誌、同人誌と形態もさまざまです。一部をのぞいて一般の書店の流通に乗っていないものを集めました。アンダーグラウンド作品集ですね。

とはいえ、やっていることというか気合いは商業の本と変りない、どころか、もっともっと好き勝手やっているので読み応えはあると思います。

 

――かなり多作だと思いますが、毎日執筆されているのですか?

 

十三:執筆にかんして言えば、ほとんど毎日書いています。注文頂いた仕事でなくても、どこにも発表するあてがなくても書きたいと思ったら書いちゃいます。我慢は健康に悪いので。

 

――書き下ろしとなる「インドア大陸」はインドを訪問された際のエッセイです。そのほかの作品にもアジア圏のテイストがちりばめられています。こういった影響は、ご自身の経験から来るものでしょうか?

 

十三:日本以外の場所は実際行ったことのある場所が多いですね。インドは通算3回行きました。書き下ろしエッセイ「インドア大陸」はほぼノンフィクションです。インドは疲弊させらながらも病みつきになる不思議な場所です。

 

――ハヤカワSFコンテスト優秀賞作品である「ヴィンダウス・エンジン」は中国の成都が舞台となっていますが、こちらにも足を運ばれたことがあるのですか?

 

十三:「ヴィンダウス・エンジン」は中国留学時代に旅行で行った成都が舞台となっています。やっぱり異国で感じる刺激は日常とのコントラストがあって書く原動力になります。

ただし海外の文化のエキセントリックな要素を物語として安易に消費してしまうのは危険だとも感じています。

 

――表紙などを考えていく中で、UKハードコアパンクのアルバムジャケットを意識していくなどのやり取りをしました。十三不塔さんの音楽遍歴などはいかがですか?

 

十三:はじめ音楽は同時代の友人が聴いているような歌謡曲(JーPOPという言葉はまだ存在していなかった)を小中学生の頃は聴いていました。

 

意識して音楽を聴き始めたのは高校生くらいで当時は聴く音楽やファッションによって棲み分けがあったように思います。でも学校のクラスではそんなこと関係なく仲良くなるので、パンクのライブにモード系の子が来てモッシュしていたりとカオスな光景もありました。

 

高校生にありがちな単細胞さでとにかく強そうな音楽を求めてパンクやラップを聴いていました。メロコアやスカコアが流行っていましたが、それを入口にハードコアパンクにも足を突っ込んでいった感じでしょうか。名古屋や豊田にはいかついパンクスがたくさん生息していた時代でしたし、いくつか血腥いライブハウスもあったので気配を消して遊びに行ってました。なぜか僕が刺されたというデマが広がったこともあった気がする。インドの寺院でEYE HATE GODのTシャツを着ていたら死ぬほど怒られたこともありました。パンクについてはろくな思い出がありません。

 

――中国に留学されていた期間はいかがですか?

 

十三:留学先の中国では、付き合っていた彼女に椎名林檎を、ルームメイトの韓国人からはPANTERAを交互に聴かされて気が狂いそうになりました。最近はあまり音楽を追いかけてません。友人におススメられたヒップホップを聴いたりしているくらいです。亡くなったTOKONAーXと一緒にやっていたHAZU&YANOMIXダブルDJユニットOBRIGARRDのライブにはたまに行きます。

 

――こういった経験が、作品集のジャケットにも反映されているのですね。

 

十三:今回の作品集の表紙は商業出版ではちょっと難しい趣味に走ったものにしたくてCRASSというバンドのジャケットを参考にしてもらいました。いろいろやりとりをするうちにCRASSのジャケットイメージとはかけ離れてしまいましたが、出来上がったものは気に入っています。デザインにはanon pressの皆さんと友人の山田くんの手を借りました。とりわけこの作品集の企画を立ち上げてくださったanon pressの平大典さんには感謝しています。

 

――映画や芸術など他分野はどうですか?

 

十三:映画は雑食で、話題になったものアンテナに引っ掛かったものをテキトーに見てます。エドワード・ヤンとジョニー・トーとコーエン兄弟とポール・トーマス・アンダーソンが好きです。絵画は、美術館などへたまに観に行きます。お気に入りは、セザンヌとベーコンと曽我蕭白とパスヘッドかな。

思想はありませんが、仏教哲学やインドのヴェーダンタ哲学は難解ですが、素晴らしいと思います。無人島に一冊だけ持っていくならインドの聖典「バガヴァッド・ギーター」になるかも。

 

――好きな小説などはありますか? 執筆するときに意識する作家などもあれば。

 

十三:ダフニ・デュ・モーリエ『レベッカ』、ジョン・クロウリー『エンジン・サマー』、金庸の全作品。あとは谷崎潤一郎が好き。

 

――十三不塔さんは名古屋に住んでいますが、東京とは違う「地方で書くこと」などを意識されますか?

 

十三:もっとたくさんSF作家が居てくれて、名古屋にも文フリがあったらいいなと思います。

 

――以前は名古屋でも文フリが開催されていたとは聞きますが……。文フリがあると作家同士の交流も活発になりますし。

 

十三:そうですね。いろんな人に焚きつけてまた文フリをやってもらおう画策していますが、自分でやる根性はないので無責任ですよね。

 

――そういえば、参加されていないはずのゲンロンSF創作講座の卒業生の方が多く寄稿されている「Sci-fire」に作品が掲載されていますが、作家同士で交流する機会は多いのでしょうか?

 

十三:ゲンロンの方たちと知り合ったのは偶発的なものです。

かつて流行ったclubhouseというSNSでご縁を頂きました。年齢やキャリアと関係なく付き合える仲間は僕にとってとても貴重です。これについては「&6」という同人誌のエッセイに詳しいのですが、かつて純文学でデビューしたときのひとりぼっちさを思えば現在の環境は本当に恵まれていますね。SFのファンダム文化はユニークで得体が知れません(笑)「Sci-fire」はわりとゲンロンと関係のない人も寄稿しているんじゃないでしょうか。

 

――今回の作品集の見所などがあれば、教えてください。

 

十三:試し読みで読める「イグナシオ」などSFっぽくない幻想奇想寄りの小品もけっこうあるのでのぞいてみてください。あと「ウェイク・イン・クローゼット」は十三不塔史上最もダークな小説なのでこちらも読んで頂けるとうれしいです。もちろん竹書房のベストSF2022に拾って頂いた「絶笑世界」ももっと知ってもらいたいです。

 

――最後になりますが、今後の作品の発表予定などあれば、教えてください。

 

十三:7月に中国歴史学者の大恵和実さん、中央公論新社の藤吉亮平さんの編著になる「宇宙大将軍侯景SFアンソロジー 梁は燃えているか」が出ます。日中の豪華メンバーが顔を揃えた異形の歴史SFアンソロジーになる予定。

さらにひょんなことから企画が立ち上がった脱出歴史アンソロジーも同人誌ですが来年にはお目見えするでしょう。こちらははじめて本づくりにたずさわるとあって、不安で一杯ですが、先達に教えを請うてなんとか頑張りたいと思います。

年内の予定としては人生初のライトノベルを準備しています。

 

〈聞き手・構成〉anon press編集部

 

◆プロフィール

十三不塔(じゅうさん・ふとう)

愛知県名古屋市生まれ。『ヴィンダウス・エンジン』で第8回ハヤカワSFコンテストで優秀賞を受賞。

近著は『ラブ・アセンション(早川書房)』その他アンソロジー多数。

ペンネームの「十三不塔」は麻雀のローカル役から採った。

好きな食べ物はとうもろこし。射手座。