◆作品紹介
失敗が成功の母だとして、父はどこにいるのか? 写真を詰めたマトリョーシカを飲み込んだ水死体から始まる物語は、拳銃の姿をした奇妙なプロダクトや、空前絶後の成長を遂げるベンチャーキャピタルを巻き込みながら進んでいく。さて、「生存バイアス」の説明において頻出する〈被弾箇所を赤く塗られた航空機の図〉が、統計学者エイブラハム・ウォールドの論文を曲解した架空のイメージにすぎないことはよく知られている。存在しない銃創を穿たれた存在しない航空機をもとに立案される、存在しない改善案。イメージは無限に複製され、本来の意味を忘れ去られながら伝播していく――それは祈りによく似ている。ところで、エイブラハム・ウォールドはインド訪問中の飛行機事故により、48歳の若さで死亡している。現実と空想は時としてよく似た輪郭を帯びているが、それは偶然と必然どちらだろうか?「もしも」の先を撃ち抜く銀の弾丸の行方を、ぜひ見届けてほしい。(編・青山新)