◆作品紹介
2047年の日本には何もない。希望もない。だが人がいる。飯を食い、銃を撃ち、文字を書き、ちんちんを掻く人間がいる。ラーメンレビューの狂騒と、銃撃戦のハードボイルドと、少女の独白が同じ時間軸で衝突する。それだけしかないと言えばそうであり、もちろんそれだけで十分だとも言える。
本作は4人の作家による連作掌編12篇で、2047年の日本を描く。ただし「描く」という語は正確ではない。ここにあるのは世界設定の提示ではなく、空気の採取だ。能登沖で機関砲を握る元大学生。AIが漫画を描く街でGペンを震わせる17歳。デマだと知っている地図に殉じる男。ラーメンの出汁が薄いと泣く店主。彼らは誰も世界を変えない。ただそこで生きて、生きたという事実だけを刻印する。「人はどう生きるかではない、どう生きたかだ」――この言葉が篇をまたいで変奏されるたび、意味がずれ、重なり、裏返る。人の一生がそうであるように、未来は一枚岩ではない。(編・樋口恭介)