◆作品紹介
この現実のこの私には、彼らについての一つの思い出がある。五年ほど前までは、どの街に行っても、どの商店の店先にも、機械の身体で愛想をふりまく接客ロボットが立っていた。私の記憶が間違っていなければ、愛くるしいけれどもどこか不気味な表情を浮かべた彼らは、なんとも言えないおかしみを誘い、それによって老若男女問わず、多くの人々に愛されていたように思う。けれども今、彼らの姿を見かけることはほとんどない。いったい彼らはどこに行ってしまったのだろう――。本作はそうした「既に過去になったこの現実の未来」のノスタルジーから、一歩先にありえたはずの、この現実とは分岐していった、別様の未来へと手を伸ばす。今も彼らはある一つの世界線の中の、ある森の中で息づいており、彼らの仕方で、私たちが見ていたものとは異なる、別様の思い出を伝え始める。(編・樋口恭介)