◆作品紹介
一九〇五年から六年にかけて構想された「断片」において、夏目漱石はこんな文章を書いている。「二個の者がsame spaceヲoccupyスル訳には行かぬ。甲が乙を追い払うか、乙が甲をはき除ける二法あるのみぢや」。
人類は古来より死を忌避し、無限の生を求め、あるいは人形/偶像などの代用物に生を仮託し、それをもって死によって穿たれた穴を満たそうとした。死者の似姿としてのロボットが死者の場所を侵犯しようとする本作「未亡人のロボット」は、むろん後者の系譜に属する。
夏目漱石の言が正しいならば、死者と死者の代替物は相互に排他的な関係にある。実体を持つロボットが亡霊を駆逐するか、あるいは亡霊に取り憑かれた生者たちがロボットによる記憶の侵犯を拒否するか、とりうる選択肢はその二つのうちのどちらかしかない。
けれども本当はそうではない。その先にある三つ目の選択肢は、あなたが自身で目撃するほかない。(編・樋口恭介)