◆作品紹介
すべては生成されている。夏の日差し、塩素の香り、雨に毛羽だったアスファルト、夕暮れの道。今や実際の夏よりも、思い出される夏の総量の方が大きくなってしまった。加速する情報技術はあらゆる感傷を先取りする。もはや懐かしい夏なんてピクセルの奥にしか存在しないし、ピクセルに奥などというものはない。ノスタルジー溢れる詩文とコーディングやプロンプトめいたテキストが目眩のように切り変わる本作は、AIが幻視する現実世界であると同時に、テクノロジーを身体化してしまったわたしたちが見ている風景そのものでもある。高度化するAI生成物は時にわたしたちに懐かしさを錯覚させる。しかし、AIが学習データにもとづいて生成を行うのならば、それらはすべて高次の埋込空間から思い出されたものであるとも言えるかもしれない。眠らない機械は夢を見ない。それらが見るのは幻覚だけだ。ああ、プログラミングたちが代わりに夢を見てくれるなら、わたしたちはもう眠らなくても済みそうなのに。(編・青山新)