2023年12月に始動したanon recordsでは、2024年2月現在までに、MON/KU「Long、 Long、 Long October」、KYLE MIKASA「Trash Metal Gabber」の2曲を配信中。今回はそんなanon recordsの開始を記念して、運営メンバーであるanon press編集部による2023年の振り返り座談会をお届けする。印象に残った曲からライブの思い出まで、様々な角度からの音楽放談をお楽しみいただき、次なるanon recordsの動きに期待していただきたい。
MON/KU「Long、 Long、 Long October」
KYLE MIKASA「Trash Metal Gabber」
メンバー紹介
平大典(以下、平):今日は、anon recordsの開始を記念して、編集部メンバーで去年の音楽で印象に残ったものやレコメンドなどをざっくばらんに話せればと思います。まず、12月から始まったanon recordsについて、てーくさんから紹介をお願いします!
てーく:てーくです。編集部内で音楽の話することが多くて、いつかのミーティングで「レーベルやろうか」ってノリになったんですよね。で、僕はその時点では本当にやるのかなって感じだったんだけど、気づいたら始まってました笑。でも結構反響ももらえて良かったですね。
平:ありがとうございます。多分、初めて出るanon pressの編集部メンバーも多いと思うので、とりあえず自己紹介しましょうか。今日は音楽の話をするから、それぞれの音楽遍歴を中心にいきましょう。
私は平と申しまして、30代です。 若い時から銀杏BOYZとか54-71をはじめ、青春パンクやオルタナ周辺を聴いて育ってきました。
ろっとん:ろっとんと申します。とある高専に在学中の19歳です。 音楽を作っています。 中学生の時はRADWIMPSとかの邦ロックを聴いてて、 高専入ってからはナンバーガールにはまってオルタナティブロックを聴くようになりました。最近はオルタナティブロックを中心に、HipHopやダンスミュージックを聴いています。初めて買ったCDはセカオワです。よろしくお願いします。
青山新(以下、青山):anon press編集長の青山です。SF作家とかをしてます。意識的に聴きはじめたのはシューゲイザーが最初な気がします。ヴェルヴェッツの「Sister Ray」とかから入って、王道にマイブラを通り……そういえば当時はXINLISUPREMEが「Seaside Voice Guitar」を出して復活してたりしましたね。そこからよりノイズっぽいのとか、プログレっぽいのとか聴いて、志人あたりがきっかけでHipHop、特に日本語ラップにハマってそのまま、という感じです。よろしくお願いします。
永良新(以下、永良):永良新と申します 。anon pressでは主にデザイナーとして活動しています。普段は漫画を描いていて、次描こうとしているのが商業向けの作品なんですけど、それがたまたまバンドものということで変な繋がりを感じています。聴いてきた音楽は、もともとはL'Arc〜en〜CielとかGLAYを経由してX JAPANを聴き始めました。そんな感じでヴィジュアル系のバンドを主に 聴いてきて、そこからメタルとかプログレッシブロックとかに派生して洋楽を聴き漁ってきました。よろしくお願いします。
同志しろ(以下、しろ):最近加入させていただいたしろと申します。 聴いている音楽は邦ロックとネット・オタク系の音楽全般で、 具体的にはw.o.d.やアメリカ民謡研究会とか、ハードロックやサブカルっぽくてちょっと実験的な要素が入ってたりもするようなロックが好きです。ネットだと最近はwebcoreに注目していて、あとは電音部がアツいです。よろしくお願いします。
猿場つかさ(以下、猿場): 編集エンジニアの猿場です。SF作家をやっています。エンジニアの方でブロックチェーンの書籍の翻訳をやっていたりします。2023年は、というかここ数年ずっとそうなのですけれど、メランコリックでダウナー、けれど未来を仄めかし唆すような音楽が好みです。2023年は様々なライブに足を運んだのですけれど、ポエジーや魂を感じられたものばかり記憶に残っています。最初に買ったCDはUnderworldの『Beaucoup Fish』でした。
平:みんな、意外とバラバラな音楽的なバックグランドがありますね。
去年よかったライブ
平:一通り自己紹介済んだので、まずは座談会の言い出しっぺとして、ろっとんくん、去年の音楽でよかったものを紹介していただければ。
ろっとん:わかりました。去年はGEZAN、world's end girl friend、ROTH BART BARONが発表したアルバムがすごく良くて、すべてライブに行きました。
GEZANは去年リリースした『あのち』がすごく良くて、前作の『狂(KLUE)』からの流れの曲をMillion Wish Collectiveとやることによって、肉体的で原始的な強さがより強調されていて素晴らしかったですね。
https://www.youtube.com/watch?v=sqXO1kJ5Vao&pp=ygUFZ2V6YW4%3D
平:確かにそういうのはありますね。前回の『狂(KLUE)』なんか、令和最初の衝撃みたいな感じのイメージでしたけど。
ろっとん:GEZANのライブは、3月の岡山公演に行きました。『あのち』の曲と『狂(KLUE)』の曲をつなげてやってくるんですけど、2つのアルバムをライブでうまく融合させてましたね。身体に訴えかけてきて、なにか行動しなきゃいけないような気にさせてくれる感じでした。
実際、GEZANのボーカルであるマヒトゥ・ザ・ピーポーは自分たちでフェスを主催したり、パレスチナの戦争への寄付のための曲を作っていたりと実践的に行動しています。
平:やっぱ観てみたいですね。
ろっとん:本当に今信じるに足るバンドだなと思いますね。
平:ROTH BART BARONのライブは、どういう感じでしたか?
ろっとん:ROTH BART BARONはバンドメンバーが結構多くて、6人くらいいるんですよね。トランペットとかいて。静かすぎないというか、ライブで曲のイメージが変わる感じがすごい良かったですね。
https://www.youtube.com/watch?v=zPWLMfyPMH8&ab_channel=ROTHBARTBARON
ろっとん:そういえばworld's end girlfriendsの話をしてなかったのでしますね。11月にあった東京公演のライブを見にいったんですが、たまたま編集部の猿場さんもいて一緒にライブを見ました。去年見たライブの中で一番よかったですね。ライブの最後の方に僕の隣の2人が肩を組み始めてましたね。多分その2人は知り合いではないと思うんですが、ライブがよすぎて肩組んじゃったんでしょうね。猿場さんと僕はライブ後完全に持っていかれちゃって、「WEGはSFだ」とか「聴く三体三部作だ」とか変なうわごとしか喋れなくなってました。
https://www.youtube.com/watch?v=81WkubIWSMs&ab_channel=VirginBabylonRecords
平:トランスしとるやん。
ろっとん:音の情報量が多すぎてトランスしちゃうんですよね。超高密度の情報を浴びて、時間が飛んでました。やっぱりWEGはSFです。
猿場:わたしの前にろっとんさんがいて、その隣に別のお客さんもいたのですが、もう終始感極まっている感じでしたね。印象的だったのは、ライブの最終盤、「Girl」が演奏されはじめてそのPVが投影された瞬間、後方から西洋人の方が飛び跳ねながらわたしの前に来て、ろっとんさんの隣の方と肩を組んでノリはじめたことでした。感極まったのか涙ぐむ彼を見て「ああ、わたしたちは音楽で連帯することができるのだ」と思いました。テクストにしろ、音楽にしろ、わたしたちはまだ、連帯への希望を捨てることなく生きていていいのだと思いました。
平:一体感、出していきたいですね。いいなー、ライブ行きてえなァ。去年はPorter Robinsonと4s4kiのライブしか行けなかった。……今年は、みんなでライブとか見に行きたいですね。
https://youtu.be/-C-2AqRD8io?si=2XcBfmw-G_NxpNCC
平:新加入のしろさんは、よかったライブ、なんかありましたか?
しろ:ライブは今まで一度も行ったことないですね。インターネットでずっとしこしこ音楽を聴くっていうことくらいしかできなくて。今年のサカナクション復活ライブなんかには行く予定なんですが。
平:しろさんはカナダに住んでいるんですけど、カナダで流行ってるバンドとかの話も伺いたいですね。
しろ:私は今バンクーバーにいるんですけど、やっぱり移民国家の一大移民都市なので音楽も国際色は豊かですね。メジャーなところではImagine Dragonsなんかが人気でときどきライブに来たりしますが、パブや路上で演奏したりのライブハウスの外でのライブミュージックシーンもかなり活発なので、そういったところで学生などを中心に自分の文化的バックグラウンドを持ち込んだ新しいバンドが出てきていたりはしてますね。あいにくあんまりディグれてないので具体的なバンド名は出せないんですが……
てーく:僕は去年はArctic MonkeysやTHE 1975などのUKバンドのライブやPorter Robinsonのライブに行きましたね。いずれも素晴らしかったですが、特にTHE 1975のライブはコンセプチュアルな動向も含めて同時代に経験できて良かったなとしみじみ思いましたね。ロックが時代と共振している様を目撃するのは実は初めてなんですよね。Nirvanaはもちろん、Radioheadとも少しズレた僕みたいな世代の人たちはそういう感慨があったと思います。ちなみに国内バンドのベストアクトはTHE SPELLBOUNDでした。
https://youtu.be/rR1lgEMMJwo?si=zbk2Jzvvh7H7uXsm
moreruの衝撃と長谷川白紙との出会い方
樋口:GEZANもいいけどmoreruもいいからmoreruも聴け!
https://youtu.be/dF_LzsZrYww?si=zi-3s1i15RrmlfcD
平:moreruは去年樋口さんに聴かせてもらってすごくハマった記憶がありますね。「念写」がリリースされた翌日に樋口さんと名古屋で会ったんですけど、「なんか100回ぐらい聴いたんだよね。」みたいなことを言ってました。しろさん、moreruとかは聴くんですか?
しろ:moreruは初めて聴いたんですけど、神聖かまってちゃんなどを最近たまに聴いていて、確かにパンクの流れで影響を受けているような感じはしましたね。ボイスチェンジャーの感じとか。
平:moreruのインタビュー読んだんですが、「同世代にやべえって言われたいのに、青春パンク聴いてるようなじじいが反応してくるんだけど」みたいなことを言っていて、ショックでしたね……。
ろっとん:しろさんもmoreruを聴こう!
平:年末に樋口さんと会って、moreruのレビュー書いてくださいよって言ったら、樋口さんは「『moreru聴くと気持ちいい』ぐらいしか書くことないよ!」って言ってて、もっと語り口があるだろと思ったんですが、moreruを聴くと気持ちいいという感想しか出てこねえ! 最高だ!
ろっとん:平さんはあれなんで、もう大丈夫っす……しろさんは最近聴いてる音楽とかありますか?
しろ:最近は長谷川白紙にハマってますね。現代ジャズっぽい感じがもともと聴いてたアメリカ民謡研究会の音楽と通じるところがあって、歌うということを解体するような、調子が一般的な歌唱とだいぶ異なる感じが結構好きなんですけど、長谷川白紙にもそういうのが見られて大変アツいです。
平:長谷川白紙でオススメありますか?
しろ:ファーストEPの「横顔S」って曲がオススメですね。最初永良さんに教えてもらって、これにめっちゃハマりました。この感じでボーカル入るんだ! と思って。
https://youtu.be/kkeZKsF8N7Y?si=fQR1lNIb6JwexV0p
永良:知ってると歌うんだろうなっていうのがわかるんですけど、いきなり聴いたときはびっくりするかもしれませんね。この曲が入ってるEPで衝撃的なデビューを果たして、立て続けに進歩してる感じですね。
去年ユリイカでも特集されて、Flying Lotus主催のレーベルからデビューしましたね。あとライブも面白いですね。人体を完全にプロジェクションマッピングで隠しちゃう感じでライブをしていて。
平:なるほど。おもしろいですね。
耳中華に連絡したい
平:いい機会なので聴きたいんですが、青山さんが普段どうやって曲をディグってるか知りたいですね。
青山:特にディグってるとかはないですね。正直僕はあまり音楽を身体化していないタイプの人間なので、意識的に聴こうとしないと聴けないんですよね。だから好みのアーティストのSoundCloudを見て、その人がフォローしている人を聴いて、さらにそのフォローしてる人を……みたいな素朴なのしかないです。
平:去年、青山さんから教えてもらった耳中華を最近よく聴いてるんですけど、どうやって見つけたのか気になっちゃって……「太陽」が特に好きで、聴いたらびちょびちょに泣いちゃいますね。
https://youtu.be/7APxD8ZDiAg?si=dKKxwj2qYR-KRXTK
永良:確かにどこから見つけてきたのかわかんないですね。
青山:どこだったかな。でもそれこそ2022年の『笑う光』あたりからなので、全然後追いですね。そのころだともうAVYSSとかでも注目されてましたね。「太陽」はピロピロしたリコーダーみたいな音に合わせて花火が散る映像が好きです。あと個人的には「また」が好きですね。音程をいじった結果、あと一歩でノイズというか、言葉ではないものに転換してしまいそうになったゆっくりの声にグッときます。耳中華の曲ってゆっくり音声を一文字ずつ音程を調整してつくっているらしいですけど、ボーカロイドの隆盛を経験したあとの時代の曲とは思えないほどにボーカルがカクカクしているというか、ぎこちないですよね。でもその今にもほどけそうな感じにある種の切実さが宿っている。バラバラになった記憶の残骸がインターネット的な無限引用の応酬の果てに結んだ、儚いイメージという感じ。そう考えると、あのMADみたいなYoutube映像を“ライブ”と称するあたりもしっくりきますよね。
平:耳中華、一曲一曲一分ぐらいで短いんですけど、よい。anon recordsで出してほしいっす。
青山:AVYSS magazineで音楽ライターのnamahogeさんがインタビューしてましたけど、平成初期くらいの生まれの人らしいんですよね。つまりニコニコのゆっくり全盛期から、今のYouTubeのゆっくり解説動画ブームまでを経験してきているはずだと。そして、「テント買おうと思った」がTikTokでバズったことがあったんですけど、そういう平成のインターネットの中で結ばれたイメージが再びTikTokへと解き放たれていってる感じも、耳中華の儚さというか「今この瞬間に奇跡的に出会った」という印象を強めている気がします。あと、TikTokやインスタのリールにおける人工音声文化って、Siri以降のものという感じがするので、そこにゆっくりが登場するのは面白いですよね。
平:私もインタビューを読んで、さらに依頼したい気持ちが増しちゃいました……
おすすめの日本語HipHop
平:青山さん、他に最近よかった曲とかありますか?
青山:Cold Roseがいっぱい活動してくれてて嬉しかったです。Arigato Maneとのアルバム『幻想流離』とかATUKIとの「屍國」とか。
https://youtu.be/Xn3fJ2GikAg?si=evpT25mWHSpUcLnE
平:かっこいいですね。
青山:2010年代ぐらいにJin DoggとかKID NATHAN(現・TYOSIN)とかと一緒にやってたので覚えてる方も多いと思うんですけど、またここ数年活発に活動してる印象ですね。なんというか…… 雨が降る暗い森の奥の苔生した石の裏から聞こえてくる金属と黴の匂いのする風、みたいな感じの、湿度と乾きが共存したムードが好きです。あと去年だと特に「Die Alone」って曲が好きで。チリチリとした不穏だけど流麗なビートの上を、洪水とか土砂崩れみたいなラップが通り過ぎていくという。デスボイスとかメタルの雰囲気とかも感じるんだけど、もっと非人間的で広大な時間軸に向けて開かれてる感じがあってよかったです。本人のキャラクターとうまくマッチしてるというか。この曲ビートはShine of Ugly Jewelなんですけど、彼の「悪臭」が去年では特に好きで、この組み合わせには非常に納得感がありました。あと時々anon pressをチェックしてくれている感じもあってありがたいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=Y-5_eFFVLGc
あとはなんだろう。UetaShunっていうラッパーがいて。この方も近年精力的に活動を見る気がしてるんですが、かっこいいですね。昔はYUNGGUCCIMANEっていう名前で活動してて、KOHHとかにも注目されてた人なんですけど、当時僕は彼の「MEW2」って曲が好きで。最近の「Heavn Of Heavn」とかは、僕が聴いてたときのYUNGGUCCIMANEのネバっこいキモい感じが出てて好きでした。
https://youtu.be/4LWPj6TBAoE?si=EiPilLK8pZOBQuoP
平:そもそも去年ってどういった曲がHipHopであったんですかね。あんまり追いかけられておらず…… 他におすすめがあれば、ぜひ!
青山:日本語ラップだとWatsonの1stアルバム『Soul Quake』とかはやっぱりみんな印象に残ったんじゃないですかね。いよいよ満を持して「こいつがゲームチェンジャーだ!」という感じで。Watsonはあの、どっちつかずな感じを前面に出してるのにかっこいいっていうのが新鮮ですよね。言葉遊びの面白さとかがよく語られますけど、それもいわばユーモアによる宙吊りの効果をうまく援用してるって感じがします。僕はeydenとの「Working Class Anthem」のリリックが特に好きで。「居ないけど彼女がいかないでって言ったとしてもいく仕方ないぜ」って、ダブルミーニングをサラッと入れつつ反実仮想を組み込んでて、反復横跳びみたいな感じなんですよね。アクロバットさで言えばほぼSFです。あと去年だとralphとJUMADIBAと一緒にやった「Get Back」も大流行りでしたけど、このバランスはいいですよね。ralphはかなりロジカルで、一方のJUMADIBAは非常にアトモスフィアが強い。その狭間においてWatsonはすごく剥き出しなんだけど、それをわかりやすくリリックとフローに昇華させているという感じで。やはりHipHopって大なり小なりキャラクタービジネスとしての側面があるわけですけど、去年はそれに由来する小競り合いとかも多くて、そういう「どこまで突き通すのか」というチキンレース的な“リアル”に対して、Watsonのそれは非常に軽やかで見ていて気持ちがいいです。
https://www.youtube.com/watch?v=F0U7wwXCqdo
ろっとん:あと去年出たアルバムだったら、JJJのアルバムがよかったですね。JJJはKID FRESINOとFla$hBackSっていうユニットを組んでた人です。
平:JJJは、TOKYO CYBERPUNK TRIBUTEの編集をしているときに、Benjazzyとフィーチャリングしている「Cyberpunk」という曲を発見して、イメージの形成などでお世話になりました!
https://youtu.be/kHDibKjaIUk?si=TaJaO0MpDpESlprV
ろっとん:JJJのアルバムの中にOMSBが参加してる「心」という曲があって、それがすごいよかったです。このアルバムは自動車学校に通ってたときに、そこで知り合った人に教えてもらいました。
https://youtu.be/cND2Pi7cc78?si=Hven4jNQdvv8L5fr
平:ええ思い出や…… OMSBさんはInstagramのストーリーズで、吉田棒一さんの「俺太郎」を紹介してくれてましたね。てーくさんが教えてくれました。
ろっとん:この曲はビートをSTUTSが作ってて、これがまたかっこいいんですよ。内省的なリリックとビートが上手くマッチしてますね。
音楽のディグり方と海外の動向
永良:この流れでてーくさんが紹介しそうな曲の紹介もしますね。まず、長嶋水徳がよかったですよね。この曲は、ほんとに神がかってますね。V系ぽいフレーズも見えるし。
https://youtu.be/sR37JWymWlA?si=F1w-YdoUQAbONl0j
ろっとん:長嶋さんは、春ねむりのバンドメンバーですね。去年出したEPはバンド編成で曲を出してたんですが、よりラディカルな表現になってて良かったです。
永良:MVにめっちゃグリッチ使ってて、もともとグラフィックやってた人間としてはたまらないですね。
ろっとん:てーくさんは去年のベストにLaurel Haloを挙げてましたね。
てーく:Laurel Haloは素晴らしかったですね。2020年代に残る名盤だと思います。なかなか良さを言語化するのが難しい作品なのですけど、ふつうはアンビエントってそんなに複雑な構造はしていなくて、まあかなりレイヤーの数を重ねたりとかはあると思うんですけど、そのレイヤーの入り組み方が独特というか、どうやって作ってるのか想像できないんですよね。なんというか、2階だと思っていたら1階にいたみたいな変な空間構造の聴覚経験ができるというか…… 音色的にも色んなものが混ざっていて、とにかく異様な時空間の作品だと思います。
https://youtu.be/6JLjky47nsQ?si=4YhQQUYlvbCU60vX
ろっとん:自分もアンビエントを作ってるのですが、Laurel Haloのレイヤーの重ねかたは参考になると同時に、自分じゃこんなの絶対できないよ……と思いましたね。
平:確かに聴いたらすごい良かった記憶があります。去年は、てーくさんに教えてもらったHomecomingsの『New Neighbors』をよく聴いてました。特に「Us」という曲は、ほぼ毎日聴いてますね。てーくさんは普段どうやって曲をディグってるんですか?
https://youtu.be/f191jgQX1UA?si=WVeqTCDNZO0faVQf
てーく:僕は完全にX(Twitter)の耳の疾いフォロワーに依存してますね。だから全然ディガーじゃないです。こうやって話しているのも烏滸がましいくらい…… 本来(?)だったらBandcampなんかでディグるんでしょうけどね。まあそういうのもたまにはありますけど…… 好きなレーベルをフォローしといて通知来たら新作聴くという、ライトなリスナーです。
平:自分も人から聴くのが多いですねー。若い頃はバナナレコードとかをウロウロしてガサゴソしてたんですが、便利になった……。去年は、洋楽だとKing Princessの「Let Us Die」ばっかり聴いてました。好きな人と崖からダイブしちゃおっか、みたいな歌で聴きやすいです。
クィアなムードのアーティストで、海外だと有名っぽいんですが、日本だとあんまり取り上げられてない印象です。
https://youtu.be/N2ExbUZpoGc?si=KE1JOt9C_rKTDGZ3
ろっとん:マネスキンとかとも雰囲気が近いように感じましたね。マネスキンも去年アルバムを出してましたが、ロックの力強さを感じるアルバムでした。日本でも人気のようですし、こういうバンドがメジャーなシーンにいてくれることはすごくありがたく感じます。
平:MVにもドラァグクイーンみたいな人が出てきますね。マッチングアプリでこの人が好きな人のコミュニティに入ろうとしたらKing&Princeしか出てきませんでしたが……
ろっとん:Tinderだと自分のタグにSoundCloudが使えて、SoundCloudが好きな人とマッチできるようになってますね。
平:な…… わからん。
青山:洋楽だと、年末にPlayboi Cartiがバッと新曲を出してきたのはトピックだったんじゃないですかね。そんなに熱心に追っていないので曲に深く触れるのは控えておきますが、僕は彼のファッションアイコンとしての面に興味を持っているので、個人的に「H00DBYAIR」はテンション上がりましたね。Hood By Airは2010年代前半のラグジュアリーストリートの流れでグッと出てきたブランドなんですけど、この辺のコミュニティとずっと仲良いんですよね。Yeが2022年のBET AwardでHood By Airのレザーフーディを着てたり、YEEZY Season 9でデザイナーのShayne Olivereとコラボしたりと、ずっと再注目の兆しがあって。去年のライブでPlayboi Cartiが2016年のワークシャツを着てて一部で盛り上がってましたが、そこに来てこれですからね。古着界隈でもいよいよ1990〜2000年代が掘り尽くされて2010年代に手が伸びつつあるタイミングで、PAT MARKETとかvossとかがよくKTZあたりを仕入れているのを目にしましたが、その流れでHood By Airも来ているなと。もともとShayne OliverはHood By AirのショーでArcaとかYves Tumorをいち早く起用してたり、Anonymous Clubっていうコレクティブで若手のアーティストをフックアップしたイベントをやってたりと、カルチャーをごった煮にした動きが得意な印象だったんですけど、個人的にはanon recordsもそういう感じでやっていけたら面白いなと思ってます。
https://www.youtube.com/watch?v=EXRhzwA7Z3Q
あと洋楽か微妙ですが、SNSでバズった系ではRobin Ganが面白かったです。「みんなはバレンタインとか言ってイチャイチャしてるけど、俺には関係ねえ、俺は数学をやる」みたいな感じの曲とか歌ってます。
https://www.youtube.com/watch?v=rNOIENVUx7o
平:感じ、悪いなァ。
ろっとん:曲調はハイパーポップっぽいところもありますね。
平:……今聴いたんですけど、大好きな感じでしたね。MVもおもしろい。
青山:Robin Ganは「MATHdrill2」とか、近年の攻撃的でダークなHipHopのスタイルで弱者男性的なテーマを歌うのが多くて、まあこれには賛否両論ありそうですが、ハックの仕方としては納得感があるというか。
しろ:これカナダでめっちゃバズってましたね。大学のアニメクラブで知り合った友達から見せられました。
平:そうなんすか! ……ちなみに、アニメクラブってなんですか?
しろ:日本の大学のサークルとはちょっと違うけど、アニメを見る、喋ることを通して色んな人と繋がりましょうみたいな大きいサークルです。みんなで一緒にアニメを鑑賞して、アニメの感想を言ったりします。
最近は「パーフェクトブルー」とか上映してましたね。メジャーなアニメを毎週の上映会でやりつつ、90年代とかのちょっとコア寄りな映画を月一の鑑賞会で流したりしてます。
平:「APPLESEED」(2004)を観て、BOOM BOOM SATELITESを聴こう。
しろ:アニメの流れで紹介したいんですが、最近ナード系の音楽だとMETAROOMやGraham Kartna、NANORAYといったアーティストの周りでwebcoreというジャンルが形成されつつあって面白いです。
平:webcoreですか。あまりというか、初めて耳にしました。どんなんですかね?
しろ:Vaporwaveなどの流れを汲むものなんですが、90年代から20年代初期のインターネットを懐古する流行で、「ENA」っていうDOOMみたいなビジュアルのネットアニメでいくつかのトラックが使われたのがきっかけに海外でバズりました。このアニメがまたブッ飛んでて面白いのでおすすめです。Backroomsで見るようなショッピングモールで流れてそうな感じだったり、windowsの効果音をサンプリングしてたり、ゲーム音楽っぽかったりします。
東方Projectなどのニコニコ動画的な音楽性とも相性が良くて、アングラネット懐古の流れで日本にも輸入されつつあるので、今後の動向が楽しみですね。
ろっとん:今の日本のシーンだと、ナード系で熱いのはPAS TASTAでしょうね。ウ山あまね、hirihiri、yuigotなどソロでも活躍してるアーティスト6人組のグループです。ハイパーポップの流れを汲みながらあくまでJPOPをやるという尖った意思をもったグループです。ピーナッツくんを客演に招いた「peanut phenomenon」は自分のよく行くクラブでもアンセムのようになってましたね。尖った音楽性を持ちながらも、マスに刺していけるポテンシャルがあると思います。今後が気になりますね。
大注目のMON/KU、今後のanon records
平:最後ですが、去年はMON/KUさんもアルバムを出していましたよね。
てーく:素晴らしかったですね。MON/KUさんはアルバム出すまでの期間が結構あって、それ以前にもTHE NOVEMBERSとか、僕の好きなバンドや、そこら辺の音が好きなXの音楽オタクからは注目されていたので、満を持してという感じでした。レーベルを始めようと思った時まず思い浮かんだのがMON/KUさんだったので、リリースが実現できて本当に嬉しかったですね。最近では音楽プロデューサーの蔦谷好位置さんのプレイリストにも入っていたりして、良いタイミングでリリースできたなと思っています。
https://www.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_ncKrZH_HDhDmKaroONhBtZpXq71RzkpME
平:anon recordsの今後の予定などあれば教えてもらってよいですか?
てーく:何も決まってないですけど笑、そのうちモノとして何か出したいですね。
ろっとん:今日はみなさんありがとうございました。お疲れさまでした。

