「ただのポン出しには興味がありません」
プロンプトを投げて一枚の画像や一本の音源を出させる――それは一回きりの偶然性にすぎない。ぼくが思うに、生成AIの本当の使いどころはその一段上、「ツールをつくる」ことにある。ツールとは凝固したものの見方であり、そこに埋め込まれたパラメータのひとつひとつが可能性の軸になる。軸が増えるたび、生み出されうるアウトプットの空間は指数関数的に広がっていく。作品をひとつつくるのではなく、作品が生まれる条件そのものをメタ・デザインすること。かつて何ヶ月もの実装を要したこの営みが、いまや一晩の対話から立ち上がる。
今回、作曲家の灰街令と共作したアプリケーション「Grain Gamut」はその実例だ。このツールが生成するのは音ではなく、まず「空の時間の箱」――BPMに基づく全音符から32分音符、三連符、5連符までの、音を持たない純粋な音価の配列である。空白のリズムが先に設計され、そこへフォルダ内のオーディオが裁断されて流し込まれる。音を出す機械ではなく、あらゆる音を音楽化する条件を組む機械。まさに「条件の設計」を、さらにもう一段メタに実行するツールである。
本稿で灰街令は、このツールの背後にある思考――ケージのギャマット技法をアクフェンのビートで乗っ取るという転倒――を、一通のプロンプトが楽器になるまでの過程とともに書いている。解剖台の上ならぬAnthropicの上で、ケージとアクフェンは必然的に出会う。みんなもやろう、ツールメイキング。(編・永良新)
この続きは有料会員限定です。
ログインまたはご登録、プランをご確認ください。