◆作品紹介
مركز線、삼鷹站、極ٱلْمَشْرِق、東京が砕け散っている。いつものことだ。粉々になった街と粉々になった言葉がわたしたちの肉体と脳を引き裂いて回り、その肉塊は貪られながら遥か彼方の、見知らぬものたちへとその記憶を伝播する。そうしてあらゆるものは混濁し、わずかな韻律の面影だけを頼りに再配列される。それは別に特別なことではなく、すべての街とすべての言葉は多かれ少なかれ、そうした仕方によってつくられている。過去のキメラ、未来のキメラ、生のキメラ、死のキメラ、胎児のキメラ、老犬のキメラ、キリストのキメラ、アッラーのキメラ。そうしたものたちが集う場所こそが東京、いやTong Kioなのだ。不世出のポエマー・お揃いのタトゥーが送る Tokyo shitを存分に味わって欲しい。かつて、寝過ごして開けたドアの向こうに東京はなかったらしいが、寝付けないわたしたちには最初から、関係のないことだ。(編・青山新)
以下、記事の本文です。
Não tivemos especulação。 Mas tínhamos adivinhação。
ウチらに思弁はなかった。でも予言があった。
ああ、また希望園に連れて行かれるのか
友達になれると思います。私は今日本に住んでいます。すべての関係は友達から始まります。ポルノは禁止されています。30歳以上の男性/女性は、私を追加してください。DMをアーカイブしたら、東京が消えてしまった。跡形もなく、というよりは、東京だった断片がそこら中に散らばっている。もう誰もそれがなんだったのかわからない。みんな消える。それは12匹の猿。それは高速道路を駆けるキリン。それは銀行の廃墟に巣食うクマ。わたしたちはみんな蜘蛛を咥え込んだまま靴擦れとともに未来へと戻った。
ふと目覚めると、そこはオフィス街で、午後から急速に低下する気圧とは無関係だと分かる頭痛と吐き気がして目の前にあったファストフード店の2階席に逃げ込んだ。階段ひとつ挟むだけで路上から別世界みたいに切り離されて閑散としているのに、すぐ隣に座ってくる女にポケットの中のカッターナイフを見せてやろうかと思うのに女はスーツを着た男性で窓際のカウンター席にから眺める眼下の通りを行く人を睨みつけている。わたしは彼を視覚的情報によって彼と彼女のどちらで指し示すのか決められないし、わたしと彼/彼女を、分けられるのか同じなのかも分からない。わたしではない彼/彼女が見ている路上の風景はわたしである彼/彼女の目にもほとんど同じように入ってくる。並行する二つの視線が、通りの流れを次々と走査する。
最初に、スーツを着た男。その少し後ろから、スーツを着た女。次は、スーツを着た、裸足の男。スーツを着た、片足だけズボンをまくり上げた女。肉の無い男。前歯の無い女。爪の無い指。信じられないくらい真っ赤なワンピースの集団。托鉢。公衆トイレの洗面台に張った水に指先を浸す男。金魚の目を移植した女。粘土質の亀頭に携帯ゲーム機のメモリーカードを何枚も移植してミラーボールにした男。男のような女。女のような男。護送車の窓から覗く眼鏡の男あるいは女。動くもののすべてと動かないもののすべて。私は猫の臓物を耳から垂らしながら、カフェラテに突き刺さったマドラーを目線だけで曲げようとしている女であり男。男や、女、と指差すときは無意識にわたしとは違うものとして指差している。「もの」というときには、少しの近さを感じている。記憶が鮮明になる時に、一瞬だけ、ぜんぶが不鮮明になるような、匂い、のようなもの。あなたの家庭教師、あなたは家庭教師。さようなら、私の幽霊。墮胎、断種、ダイエット、ダウンロード、焼き討ち、野球中継、絶滅、絶滅、絶滅。(ニュースの映るテレビを探しに家電量販店へ行こうと寄宿舎を抜け出した夜。それから、誰もいない家に帰ってパパの書斎でそれを見た。)
空調が壊れているのではなく、空間が壊れている。瞼を閉じる。瞼を開ける。空調が真新しいために、店内の温度は上がり続ける。最初は寝たきりのまま過ごした数日間のシーツのようだった。灼熱のシーツ、砂漠の襞、でも私たちはいずれも水の中にいる。わたしの皮膚の下で骨をつなぎとめていた筋や腱が緩み、骨格が崩れ落ちる。あらゆる臓物はそれぞれのちょうどいいまとまりに分裂し、それぞれに無数の指が生え、壁を這い回り始める。わたしは die everyday、 It ain't new to me。 Y〟all yeggas 悪性の腫瘍 to me。 結局、みんな撃たれてみんな死ぬ like GRAH、 GRAH、 GRAH。 禍々しいともいえるし、夢のように美しいともいえる。結局わたしは、フーディーの巨大なポケットの中でカッターナイフの刃を折ってバンズに埋め込んだ。OK、余裕。
「どこにいる?」
電車。電車に乗ってる。 مركز線乗り越して気づいた今日は始業式だけど삼鷹站の手前でパニック発作に襲われて鞄の拘束着を置き去りに下車した。吉祥寺では気狂いジョージがキッチュな子猫と情事、Grandmaster Flash みたいにキッチンでキチン質の叙事詩をつむぐ。Jodeciが歌う I wanna freak you。 アフリカ世の琉球列島の東端の Tong Kio からSay السلام。 ハモニカ横丁は電気ウナギの発電器官だ。多言語のモザイク。ピンクのフェイクレザーのジムバッグから、ジグザグに飛び出した。ワンブロック隔てたらもう通じない。お前とウチらもう通じない。造語まみれ、文法はねじ曲がり、今では話者がひとりの言語が無数に発散している。バベルの塔は分子化してバベルの八百八町になった。薄く広がる世界最大の菌類の個体。クレオール言語とクレオール言語のクレオール言語。あなたのわたしのわたしのあなたのわたし。クレオパトラとクレオール・パトワで高圧縮の会話を実行する。駅前広場、笑い続けている男が立ったり座ったりしている。繰り返しの動作で意識がホワイトアウトするけど、4度目のアザーンで目を覚ましたらT.V.が点けっ放しだったみたいな夕方。ニュース番組では、標準アラビア語 اللغة العربية الفصحى に日本語、韓国語、台湾華語の語彙がミックスされたアラビア語日本方言でしゃべっている。Tong Kio Chang Pong。 極東ではなく極ٱلْمَشْرِق である。脳髄に埋め込んだキブラコンパスで、どこにいたって見つけられる。filler だけ。killer はない。知らないとは言わせないけど、知ってると言ったら嘘になる。言語は filler だ。埋め草。Amex の埋め草。三か月間の雨季の間中、降り続ける雨。何もかもしゃべってよ。あることもないことも before you die。 生きなければ死には触れられず、生は死のインタ―フェースであるが、生の背後で、死に触れようとしているものがなんなのかわからないまま、指咥えて見てる。羨ましい。嫉妬in〟 イン ザ パーク。わたしをゴム手袋にして死に触れようとしているあなた、そして全ての girls。 漢字読めない。上に書いて Arabic。
パパ、あなたのかわいい baby は、中野駅1・2番線のホームで9つ並んだベンチに座って自動販売機の裏側の何もない白い平面を見つめている。ここは、アメリカの51番目の州ではなく、アフリカの51番目の国。アフリカにいくつ国があるのかわたしは知らない。それらの国の最後尾にいる Tong Kio、 Japan。 東京大阪間をドバイでトランジットする。早く、早く、早く、早く。新宿で山手線に乗り換えるまであと6分。わたしは liminal wear を着てる
criminal。 風邪薬でゆっくりになる頭で到着までの電車賃を計算している。東中野で転落。目覚めると、文字が行為する都庁前。炸裂する漢字は眼球のガラス体の中でポップコーンになる。平面に定着していた字が剥がれて蝗の大群のように視界を埋め尽くす。わたしのドッグスはどこ? わたしのビッチズはどこ? わたしの愛しきミュータントはどこ?
都営大江戸線で引き返して練馬でゲリラ戦。ネオ練鑑で両手にネオナチとネオトージョーのネオテニー。ネオンサインで臓器への侵入路を拡張する。ウチら real hood bitch でネオバティマン。指紋も虹彩も消して決してできないアイデンティファイ。DM晒すよりPMから吸う。死んでるからすぐ電話に出る。ガラス片でぐちゃぐちゃの足。足の裏をきれいに洗った。水でふやけた、薄白い肌に無数の赤い曲線。バビロン補習からバビロン夏期講習、隣町の電車、塾帰りのコンビニでゾンビになる。終わってるのに続いてる。間延びしたサステイナブルよりも刺してなぶりころす、わが道くらし蛍をころす、光をつぶす、ひとつひとつつぶしては、ネジ式のC瓶に小分けにしていく。virus を愛撫するヴァイブス。一語一句聞き逃さない食人宣言。パジャマパーティーの延長線上でクソ退屈なナードコア合法集会を襲撃。fake friends は予測できるけど逃げられやしない。傍観者も共感者もいらない、連れて来い共犯者か重病患者。ウチらギャングスタのプリンセス、お城見とけ、お城、みたいにバービーみたいに bad bitch みたい。 クソなゲームにずっと溺れてる。これは栽培パンク、サイファイギャングを皆殺しにした。バイバイ玩具。きれいな文具よりも killer な bong でえずきながら描いてる絵図。回転しないハシュシイ屋さん。カリフォルニアロールより純ジャパの純Tokyo Shit。多摩川産、荒川産、利根川産、日出る国の aftersun。 これがウチらの最後のダンス。全部 Tokyo shit。 電車の中でも Tokyo shit。 クラブでバーナー Tokyo shit。 口に剃刀 Tokyo shit。 Yeah、 I'm on my Tokyo shit。 前世紀初頭の Swizz の声を掻き消して叫ぶ。観光地の産直 shit でまっすぐ直視できない太陽。まっすぐなウチらが小指ですくった yayo。 わたしの 'ooters は時間に正確、歯間ブラシ、偽札、My Tokyo。 具体の不機嫌。地下鉄がピンクの臓物を切り裂きながらわたしの身体を北上する。急に会いに来て big ass diamond chain のままお風呂一緒に入ろうか。
夜が明ける。山手線、任意の街での clubbin' の後、任意の駅から任意の方向へ乗車する。行くも帰るもないのに終電で池袋、始発で外へ行けるまでぶっ殺す。 AK持って復路。 袋詰めした植物。 She said 僕は死ぬのがどんな感じか知ってる、 she said 頭の中の地下鉄に巣食う無数の昆虫、 she said 南無妙法蓮華経。 頭の中から出られないのが怖くて仕方がない。胡桃の中でねっとりしたカラメルに絡め取られていく。ヒートテックの中で身動きが取れない。 エスカレーターで3段前方に立った男のパンツの中で電動シェーバーが震える。目白、一度降りて外気を取り込む。ペットボトルの蓋を開け唇をすぼめて飲み口につける。ペットボトルを持ち上げて傾けると熱い液体がゆっくり降りてくる。上唇の口内炎に熱が触れる。新宿でディープランニングドッグス。ノイズをキャンセルしたイヤフォンでノイズを聴いている。これは日本のフォークのためのエアポートミュージック。Free my baby daddy。 走って逃げてもいいよ、わたしの銃にはビームがついてる。内偵無い邸内、血の染みが落ちないカーペット。雪山で出血したらシャーベット。Jarhead に囲まれたまま jah に bet してる。また目が覚める渋谷。 渋谷の谷を降りると気圧差で膿みたいな鼻詰まりが鼻腔の奥でプツプツと音を立てる。耳から気圧が抜け喉が少しだけ軽くなる。意識を取り戻したのは恵比寿。 yen beam through。 ye bees soon。 yet been through。 dien bien hu。 海老のスープ、塩ビのスーク、燕尾服で切除した小指をレンチンする。
どこで目覚めても同じ。二度目のサイレン、それは十二時。一切の外出通行は禁止。不法投棄監視中、あそこの部屋からきつい匂い、キメセクの翁と墨田リバーサイド賽の河原から見る最後だから船上パーティでpartir宣教師と呼ばれていた男が bow tie 外して洗浄する bootie。 黒のティンバとフーディ着たルーディーの群れの中で内田クレペリンするテストステロンじゃないテスト・ジャンキー増えると罹患するプエルトリカンのヤング巫女と境内、テレビにしか映らない革命。fuck me fuck you 押し黙ってるoh shit。ウチらはウチらの陳腐さを過剰さによって超えようとしている。固有名詞に欲情する。でもみんなそうでしょ。道行く人を憎悪を、限りない憎悪を持って眺めている。わたしの海に踏み込んで。わたしのライムブックの奴隷。システムを受け入れてください。
目が覚めれば、情念都市。地表から立ち上る無数の情念の群れ。束ねられた過去や取るに足らない恨みの、トー横に垂直にぶっ刺さったトー縦。行き交う人々がそれぞれの生活を持つだけでなく、その膨大な往復の時間軸とマイクロエモーションが塗り固められて、感情都市は窒息する。行き交う人々の全てが、その無限に積み重ねられている日常の時間の束を交錯させる。思い出すのは、最初の会話。わたしは目の前にある語彙を収集してなんとか会話を続ける。Say her name。 食人だけが我々を一つにする。 Say her name。 食人だけが我々を二つにする。 Say her name。 食人だけが我々を三つにする。
消音器を外して、公園で花火。うるさい私の身体。じっとり湿ったシーツ。犬の檻、気乗りしない祈り。脳裏に塗りたくる血糊。もう誰も幽霊のように街を透明になって出歩くことはできない。巨大なものを見るときに、地べたの紙くずを誰が気にするだろう。視覚操作であり、なにひとつきれいにはならない。着座位置の図。スローモーションで蚊が飛ぶのが見える。目の前のもの(それが蚊でも犬でも滅んだ鯨類でも男でも死者でも)と結びつくときに、未完成のリアルが生まれるのだろう。ネットミームを叩き潰せ。SNSをやめろ。死ぬまでやれ。memeのドレス着て深夜徘徊。お前らの
meme じゃ孕めない。都市の免疫系がわたしを流産する。目を覚ます度、死者とともに食する無尽蔵なブレックファスト。われ密かに身罷りてヤカランハードベース。Take me back to tokyo road。 パステルカラーの愚連隊がキャンディーショップで抗争、釘バットのフルスイングでピンクの脳をぶちまけるのは良いニュースか、悪いニュースか。
起き上がれないまま5時間が過ぎる。窓の外の雨の音を聴き続ける。雨の音、雨がコンクリートを打つ音、雨が雨樋に滴する音、雨樋を流れる微水流の震える水面に雨がまた打つ音。雨が、無数の反射の中で音を複雑に歪ませる。雨の一粒一粒の、弾けた水冠の先端の粒子に至るまで、水分子のざわめきが、全て耳に入ってくる。風の中で雨粒と雨粒がこすれる。流線型に波立つ雨粒の表面に世界が内向きに映り込んでいる。そのすべての光線のやりとりを私はなぞらなければならない。布団のシーツの重なりが気持ち悪くぐちゃぐちゃに眠れない。制服三年の後の祭りは至福千年期、残酷な私服が見てる3日目の朝の公園からコンビニまでの5mが滑走路だ。二日酔いの、パンチドランクの、グロッキーの、その浮遊こそが救いだ。気を失う瞬間がずっと続けばいい。ウチらは瞬間の永続化だけを求めていた。無数のセヴンティーンの聖者たち。愛しい、愛しいセヴンティーン。
怒りがなければ糞だ。プリンセスなギャングスタ・ラップでウチら自身の殲滅を願う。絶滅したいしさせたげたい、 fuck it、 死んだら地獄に行きたい。天変地異もウェルカムな suicidal tendency で全然いいよが口癖の男あるいは女を、想像上の明瞭性で殴打しろという order。 もう惑星じゃない冥王星、迷惑でしかない警察、エアメールに蛍光ペンで引くライン、エル・アラメイン、ネイルはラメ入り、徹底抗戦も平行線だけどあらゆる境界線でゴム跳びする fruid 主義者と Freud に還るよりもヘアアイロンで刻むケロイド・タトゥー、Girl on internet。 若い野蛮人、糞食らえなる命の朝ぼらけ、蹴散らすパイロン、ノイズを発する東京のホームガールズ(東京のクイーン・マザー、東京のフライ・ガール、東京のシスタ・ウィズ・アティチュード、東京のレズビアン。)ウチらに呼びかけてくる奴は全部敵だった。ことばでウチらを動かそうとするな。ことばでウチらを動かそうとするな。ウチらを動かそうとする奴には動いてもらう。ケツに火が点いたみたいに。ディープフェイクなんていらない。あいつだって指差すだけでいい。最小限の文脈を示唆するだけで、あなたはウチらが誰であるかを知るだろう。(And you will know our name is the Lord.)
石、小さくて美しい石。君もいつか石を投げるか。君もいつか石を投げる。石は永遠。路上で飲む時は紙袋に入れる。空に大腸がアルファヴィル、後頭部百貨店をブロック塀で強打してチル。統合しないままでいる。いくつもの不等号と接続詞で結ぶ。分裂したものを分裂したままにする。分裂したまま取り出す。楽しもうとしないで。楽しませようとしないで。好きなだけ困惑して。好きなだけ混乱して。好きなだけ混濁して。完全に自由になることと完全に支配すること。生きてるだけで更生プログラム。ウチら測ってるキログラム。あからさまにセクシャルで、あからさまにメロドラマな東京、情念都市の中で中毒している。東京、私の思考が私の思考に還流する。無限に延期された東京オリンピックを生きている。ここはもうずっと文化祭の前日であるように。真っ白な massive な空間に、聖バキの美しいセクシーな唇。情念都市の泥まみれに純粋思慕を結晶させる。ここでは生存は独占されており、貴族制であり、わたしはフロアへの渇望を何度もリバイバルしている。
すべての愛しきミュータントへ。心配しないで。いずれ、すべての言語が死語になる。東京の暗部、東京の陰部、世界の陰茎、無数の男根が空を切り裂いている。(それは茎であるか根であるか。)フィストファック的な苦行は内臓的なものへの興味の中に霧散する。無呼吸の夢遊病者の群れよ、それはお前が、お前を完全にひとつの機械として、それはすべてが接続された機械の網の中の機械として、捉えることができないから生じる。倉庫Eのドア表面にはスプリンクラー設備末端試験弁室(B3F)と書かれたプレートが接着されている。艶のある色鮮やかな黄色の点字ブロックと艶のないくすんだ黄色の点字ブロックの隙間で甲虫が潰れている。あらゆる悪徳、あらゆる悪徳、あらゆる悪徳、あらゆるものに注意を向け、呼吸は浅く早くなる。あくびが出るような退屈はもうどこにもなくて、なにかひとつのものにのめり込むこともない。無数のものに釘付けにされて、目眩がして、吸い込む前に吐き出している。
〝コンビニエンスストアでチョコレートバーを買うような感覚〟 で、きれいに腑分けされ真空パックされた身体。熱圧着して硬化した縁を親指と人差し指でつまむようになぞる。熱っぽい身体を、眠気が満たす。歩くとすぐに疲れてしまい、そのたびに強烈な睡魔に襲われ、座り込んで寝てしまう。そうしてわたしたちは完全にミックスされ、皮膚の色も顔立ちもなにも変わらなくなる。分裂よりも統合が怖い。途端に分子状のわたしが、ひとつの、それこそ、手のひらの上に乗るようなサイズにまで統合されてしまったらどうしよう。一瞬一瞬ごとにわたしはわたしを決定するが、それは意思ではなく意思の否定であり、分子的に散り散りにみじん切りになった意識がつながることもなく、一切の物語から遠く離れている。白濁した静かなケニー。よくわけわからんこれマジ運命。気持ちいいけど、痛い、かゆい、冷たいけど、あつい、あっつい、震える、痒い、いたい、にぶくて、気持ちいい。過入力身体。あらゆる憎悪を増幅して贈与する。
派手に楽しんでる。ジャンキーの先駆者、ヤンキーの前置詞、三半規管に反旗を翻す3分間、散歩感覚で散乱する産卵。上半身と下半身の間にジバンシィのハジチ、パジチョゴリで乗り回すパジェロミニ、戒厳令下だけど気温は hot damn。 水みたいにたまる土手沿い海抜0で掘ってる開発前ビルヂング解体するけど買いたくないハッパが根を張ってる押入れハウス栽培、根回しして買うのは裁判員。バイト先の酒・タバコ・原初的なもの盗む。泳げ退役軍人、右派じゃないから鳴らしてるウーファー。トム・フォードの映画みたいな視界内、注射が上手なあなたを「ドクター」と呼んであげましょう。わたしの意識は、いつまでも像を結ばない、喪の日記。最初が永遠に繰り返されるみたいなもの。貫入する意識に、意識が貫入したまま、意識に貫入する貫入が意識。電車のドアが開く前に、整列乗車する人の群れが目に入る。蛇行する列、動線の寸断、エレベーター工事中の音声ガイダンス、高架下を大型車両が通過する音も、全てはドアの向こうにある。つり革の形が不定形に不揃いになる。後ろに立っていた男の鞄が腰にぶつかる。隣に立っている女が意味もなく距離を詰める。鼻をすする複数の音が連鎖する。前に座った男の鼻息が聴こえる。瞼を閉じる。瞼を開けないまま、都市的自然と融け合う。流れた血の一滴残らず、怨みや呪詛、重苦しい憂鬱や逃げ場のない時の、人間の原初的な抑圧のすべてが都市的自然としてわたしに染み渡ってくる。すべての憎悪。子宮的なものへの嫌悪も男根的なものへの嫌悪も、男性への恐怖も女性への恐怖もすべて飲み尽くしてしまう。焼夷弾に焼かれたすべての、大勢の人が生きていて大勢の人が死ぬ、大勢の人が怨み、大勢の人の腸が煮えくり返る。臓器的シスターフッド。臓器的東京。最初から、最初からだった。最初から、全部の物語が重い。全部の前後関係が重い。全部の全部が。全部が重たくて仕方がない。頭の中の純粋信仰だけがリアル。頭蓋骨は教会で頭蓋の縫合の波形はお告げだ。いつまでも治らない頭痛がする。テンプルからズキズキと金属の棒で押し込むように、イルミネーションみたいに目がちかちかしている。これは啓示だ。テンプルは神殿だ。わたしの神殿を心電図で見せてあげる。だから、泣かないで。すべての愛しきミュータントたち。これは、ミクロな私の信仰。私だけの信仰。
¹ 都留ドゥヴォー、 恵美里。 日系ブラジル人芸術と〈食人〉の思想: 創造と共生の軌跡を追う。 三元社、 2017.
