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水町綜「グレイ・ウォールズ」

水町綜「グレイ・ウォールズ」

◆作品紹介

WEBサイトや作品解説、インタビュー、伝記映画、レビュー、報告書、SNSの投稿、私たちはそれらの情報を積み上げて、誰かの何かを知る。挙句、脳内にコラージュを作り上げていく。イメージが積み重なった先には喜劇か、惨劇が待っているかもしれない。今回の場合はどうだろうか。(編・平大典)

以下、記事の本文です。

【ジェネロック・ローカルズ公式HPより】

「新たな音楽の地平を切り拓く! ジェネリック・ローカルズの最新アルバム『グレイ・ウォールズ』が遂に完成!」

 

ここがロックの最前線。白けたシーンに革命の狼煙を上げろ――。衝撃のデビューから21年、現在進行形で「最高峰」を更新し続ける〈ジェネリック・ローカルズ〉が世界へ向けて放つ衝撃の宣戦布告――最新作『グレイウォールズ』は単なる音楽体験を超えて、飽き足りたヘッズたちを新たなる高次元へと誘うだろう。

『グレイ・ウォールズ』が君の心に与える目くるめく音階のカラフルさ、スリリングでピーキーな感動、そして絶え間なく押し寄せる狂乱と興奮……それらを一度に手に入れるにはどうすればいい? 解決は非常に簡単! 今すぐお近くのレコード店、またはオンライン・ストアに全力でジェネリック・ダッシュだ!

(※初回限定仕様ウルトラメモリアル盤には昨年、カンザスシティの「ちびっ子はみんなトムソーヤ・パーク」で行われた17分間に渡る戦慄のスペシャル・ライブ映像とメンバーがフロントマンであるダグ・ウィルソンの実家のガレージで行ったスペシャルBBQパーティの模様を3時間収録した豪華特典ブルーレイが付属! )

 

『Gray Walls(グレイ・ウォールズ)』収録曲一覧

01 Afternoon TV(午後のテレビ)

02 Days of Concrete(コンクリートの日々)

03 Monotone Sky(モノトーンの空)

04 Inorganic Love(無機質な恋)

05 Stagnant Sunday(停滞するサンデー)

06 Echoes in the Corridor(廊下のエコー)

07 Blues of the Parking Lot(駐車場のブルース)

08 Gray Walls(灰色の壁)

09 Night in the Passageway(パッセージウェイの夜)

10 Quiet Gas Station(静かなガソリンスタンド)

 

【〈サウンド・ノイズ〉6月号】

読者諸兄もよくご存じの通り、世の中にはくだらないことが“ごまん”とある。片方だけ失踪した靴下の捜索に政治家の乱痴気騒ぎを支えるために愛すべき国家に税金を収める労働の日々(合衆国よ、永遠なれ! )、URLを失念したニッポンのイラストレーターによるポルノ・ピクチャを流れていったタイムラインの中から血眼になって探す時間などなど……その中でももっともくだらないことは、すっかり新規性をなくしたロートルが過去作を焼き直し続けることに違いない。これからご紹介する事例もその最たる例のひとつといえる。飽き足りず惰性で世間にカビの生えた駄作を発信し続けるまぬけ・・・バンドこと〈ジェネリック・ローカルズ〉の最新アルバム『グレイ・ウォールズ』はまさにその名の通り、魂のないグレーな壁に閉じ込められたような最高作だ。連中は「ガレージ・ロック」の担い手と自身を標榜するが、それは実のところ体のいいラベリングで、錆びついたセンスとテクニックのなさを誤魔化す小手先の方便に過ぎない。泥臭く退屈なコード進行の繰り返しと八歳のガキが書いた気の抜けた歌詞により、聴衆を睡魔と戦わせるだけでなく、彼らの存在自体を忘却の彼方へと誘ってくれる。まるで聴く価値なし。ディスクをフリスビー替わりに投げて遊ぶほうがよほど楽しめるだろう。/マイケル・アンダースン

 

【音楽情報サイト 〈サンセット・ウェーブス〉:今週の一枚! めった撃ち! 6月更新回より】

ザ・ストゥージズ、セックス・ピストルズにピクシーズ、ニルヴァーナ、初期レディオ・ヘッド、ホワイト・ストライプスにアークティック・モンキーズ……いつだって世界を塗り替えるのはヘヴィメタルやプログレッシブの複雑怪奇な難解さではなく、極限まで研ぎ澄まされたシンプルな一音だった。今からおよそ20年前、デビュー作である『ラスト・ミニッツ』で一世を風靡した〈ジェネリック・ローカルズ〉も一時期はその「高み」に手を掛けたように思えたが……しかし現在の彼らからはかつての才覚はすっかり消え失せた。それどころか、昨今の彼らはどこまでも従来のファンを失望させ続ける腹積もりでいるらしい。最新作『グレイ・ウォールズ』はまさに近年のローカルズの手癖と過去の資産を食い潰す「粗製濫造」ぶりの極致だ。アンディ・ウォーフォルのポップアートよろしく、どの曲もコピー&ペーストされたように退屈で予測可能なサウンドのオンパレード。このアルバム自体がまるで音楽のスープ缶の中のミートローフのよう。つまり何の驚きもなく、一口食べれば他のものと同じ味。アルバムタイトルが示すよう、彼らの音楽はただのぼやけた壁紙に過ぎない。いつまでこの業界にしがみつくつもりか知らないが、晩節を汚し続けるくらいならいっそのこと解散も打診してはいかがだろうか? 少なくとも、そっちのほうがいくらか地球資源の節約になるに違いない。/マーティン・ハーパー

 

【〈デイリー・ノート〉8月22日号】

誰も予測できなかった展開となった。『ラスト・ミニッツ』以来、とことん・・・・ヒット作に恵まれなかったフロリダ州はマイアミを活動拠点とするガレージ・ロックバンド〈ジェネリック・ローカルズ〉の最新アルバム『グレイ・ウォールズ』が異例のメガ・ヒットを飛ばしている。専門家による発売前レビューでは「とにかく退屈」、「うんざりするほどの駄作」、「本作を聴くよりディスクの穴に指を出し入れするほうが数倍創造的」などなど、散々酷評された本アルバムだが、今や三週連続で全米チャートのトップを席巻し、さりげないメロディと飾り気のない歌詞によって往年の音楽ファンのみならず、新世代のZ世代までをも軒並み取り込んで幅広い層の人々を魅了しているのだ。特に表題作でもある"Gray Walls"――アコースティック主体のシンプルな楽曲が、日常に安らぎを求める都会人たちのアンセムとなっているという。

本誌がリードボーカルであるダグ・ウィルソン氏に電話インタビューを試みたところ、「こんなにも反応があるとは思ってもみなかったよ。俺たちはただ、自分たちにとっての『本物の音楽』を作りたかっただけで、それは俺たちにとって、全然特別なことじゃないんだ。俺たちの音楽が、こんなにもたくさんの人々に共感されていることが今でも本当に信じられない。毎朝、この夢が覚めないことをただ祈っているよ」と喜び以上に驚きを禁じ得ないようすだった。

『グレイ・ウォールズ』の成功はありとあらゆるコンテンツが数秒間で消費される現代社会において、素朴な感情表現と誠実さこそが聴衆の心を捉える力を持っていることを思い出させる。長年苦汁を舐め続けたローカルズが一躍スターダムを駆け上がり始めたのは、音楽を通じた誠実で共感力のあるストーリー・テリングの持続する力を証明しているといえるだろう。/オリビア・フォスター

 

【緊急発売された『グレイ・ウォール』日本版ライナーノーツより】

というわけで世界からの圧力に迫られ、アルバム『グレイ・ウォールズ』のライナーノーツを突貫で書くことになったのだけれど……いや、まいった。僕はすっかり降参です。なんて言えばいいんだろう? まるで高いところから真っ逆さまに落下する悪夢がずっと続いているようで、すべての感覚がボウルの底にへばりつき、ポテトサラダと一緒にぐるぐるかき回され続けているみたいな、そんな最低な気分に僕の自意識は爆撃されていたのだ。

『グレイ・ウォールズ』の持つ「魔力」にすっかりあてられてしまった僕ときたらしおしお・・・・に無力で、スマホの美少女コンテンツに猿のように課金するか、あるいはスタッフたちと一緒に朝から晩まで繰り返し『ぼっち・ざ・ろっく!』を観るかしかできなくなっていた。そうこうして、五百時間以上かけて『ぼっち・ざ・ろっく!』を三十周くらい視聴した僕が書けたのは次の一言だけだった。

“助けてクレメンス”

でもつまり、そういうことなのだろう。ダグ・ウィルソンは、こんな苦しみにずっとひとりで耐え続けてきたのだ。だのに、僕ときたらいったい何をしていたんだろう? ただアニメを観て、大陸からやってきた乳の長い女目当てにガチャを回し続けるだけで……そういうわけで、今の僕にわかっていることは、ただひとつ。

拝啓、ダグ・ウィルソン――僕はあなたに、プレイステーションなんてしてほしくない! /真中左右:音楽ライター

 

【ジェネリック・ローカルズ、マイアミのガレージから世界へ! /ネクサス・タイムズ 10月18日号】

最新アルバム『グレイ・ウォールズ』発表以降、その勢いが依然として止まらない〈ジェネリック・ローカルズ〉が本日未明、バンド初となる待望のワールドツアー『Generic Locals 1st WORLD TOUR “The Colorful Walls”』の詳細を発表した。

ツアーは彼らの故郷であるマイアミ公演を皮切りに、アメリカ、ヨーロッパ、南米、アジア、バヌアツ共和国など全21各都市を回る大規模なものになるという。

バンドのフロントマンであるダグ・ウィルソンは、ツアーの発表について「偉大な夢が実現した瞬間だ。小さなガレージから始まった俺たちの小さな音楽を全世界に広めることができることを光栄に思うよ」と自身のX(旧ツイッター)でコメントした。

ユーチューブにアップロードされた公式ミュージック・ビデオが異例のスピードで10億再生を突破し、アルバムからシングルカットされた『グレイ・ウォールズ』とそのアレンジ楽曲が週間ヒットチャートを独占するなど破竹の勢いで活躍し続ける〈ジェネリック・ローカルズ〉。ワールドツアーはもちろん、国内外でのさらなる躍進がますます期待される。/スカイラー・レイエス

 

【エンターテインメント・ウィークリー 1月15日号】

◆こんにちは、〈ジェネリック・ローカルズ〉の皆さん、まずはおめでとうございます! ワールドツアーが大成功を収めたことを心からお祝い申し上げます。ロック史に残る伝説的なツアーを終えた今、バンドの皆さんの率直なお気持ちをお聞かせ願えますか?

ダグ・ウィルソン (GtVo): ありがとう。ツアーが、というより、バンド自体がこれほどまでの成功を収めたこと自体が正直言って未だに信じられないよ。世界中のファンには本当に感謝している。なんっていうか、俺たちの音楽がここまで大勢の人たちに受け入れて貰えるなんて、夢にも思わなかったからさ。(以下、文中では「D」と表記)

サム・オルティース (Ba): そうだね。ツアー中に感じたエナジーは非常にハイで、まさに驚くべきものだった。ロケットのようなスピードで目まぐるしく世界中を巡る日々は中々過酷だったけれど、それでも新たな場所で新たな顔ぶれのファンたちに会えたのは僕たちにとっても得難い経験だったように思える。(以下、文中では「S」と表記)

レイチェル・リー (Gt): 本当に、私たちは音楽を通じて大勢と繋がって、素晴らしく感動的な瞬間を共有することができたと思う。集まってくれたファンのみんなが私たちの曲を一緒に歌ってくれたり、一緒に踊ってくれたりした光景は死ぬまで忘れられないでしょうね。(以下、文中では「R」と表記)

◆ ワールドツアーの中で、特に印象的だった出来事や場所はありますか?

S: ツアー全体が素晴らしかったことは言わずもがなだけど、特にパリでの公演は格別だったね。エッフェル塔の真下で演奏する機会を得たことは、筆舌し難いほど幸福な時間だった。

S: それと、東京での公演も忘れがたい瞬間の一つだった。ほら? 古いジンクスがあるだろ?「ブドーカン」で演奏するとビッグになれるって……自分たちも、ガキの頃から憧れてた「伝説」の一部に加わることができたって思うと……。

R: 泣いてるの?(笑)

D:悪い。年々、涙もろくなってきてね(笑)

S: 本当に、どの都市でもオーディエンスから熱狂的な歓迎を受け、それぞれの場所で美しい思い出を作ることができたと思う。

R:ところでお二人さん、なにか大切なことを忘れてない?

D:(しばし考えて)……ああ!「サイ」のことか!

R:信じられる? サイラス(※Drを担当するサイラス・ヤング氏のこと)ったら、いきなり一人だけ乗り込む飛行機を間違えて、そのまま地球の裏側まで行っちゃったの。まるで映画の、『ホーム・アローン』みたいに。

D:あれにはマジで驚いた。何度か合流を試みたんだけど、だけど示し合わせたみたいに。俺たち世界中のそこかしこですれ違い続けて、けっきょく、ツアー中には上手く合流できなかったんだ。まったくもって、彼の不運ぶりにはお手上げだね(笑)

S:プロモーターが急遽見つけてくれた代わりのドラマーが、奇跡的に僕らのバイオリズムに上手く合わせてくれたから助かったけど……あんなプレッシャーを感じるのは、正直もうごめんだね(苦笑)

D:しかし彼女、いい腕前だったね。ひょっとしなくても、サイより上手かったんじゃないか?

S:まだ14歳だって聞いたよ。

R:ワオ! まさに天才ね。次のツアーでは、彼女がオリジナルのメンバーになってるかもね(笑)

◆非常に興味深い話をありがとうございます(笑)。続けて、バンド最大の名曲となった「グレイ・ウォールズ」について、その誕生秘話をお聞かせ願いますか?

D;ほら、きた!

R:いきなり「本題」ね(笑)

S:どこから語ろうか? あのころの僕らは本当に長い期間、ヒット作に恵まれず、まさに五里霧中で……。

D:そう、俺たちは、本当にスランプだった。新曲を出すたびにしたり顔の評論家は俺たちを酷評して、すっかりヤキの回った古参のファンたちもディスクの穴に自分のナニを抜き差しするようになって、カラテと組み合わせてまったく新しい武術を作り出し始めてた。あいつら、完全にイカれてたんだ。そのうち勝手に競技化しようとして、地下で非合法な大会まで開いて……遂には、死人まで出て……ああ、クソ。思い出すだけで気が滅入る。

S:あれは本当に、痛ましい事件だった。

D:つまり、毎日がクソの連続さ。俺は他のミュージシャンみたいに酒も煙草もやらないし、体質的にドラッグも合わない。それがどういうことだかわかるかな? つまり、手っ取り早い逃避先がないんだ。本当につらい期間だったよ。

R:それで唐突に、ダグが「修行の旅」に出るって言いだして……(笑)

◆修行、ですか?

D:そう。十字路クロスロードで“悪魔”と出会ったあのロバート・ジョンソンみたいに、ある種の「霊感」を授かろうと思ったんわけ。

S:格安パックのツアーでね(笑)

D:いきなりバラすなよ(笑)。まぁ、手っ取り早く住んでる場所から離れて、違う空気を吸ってみたくなったんだ。ありがちな悪あがきさ。ツアーの行き先はダリエンとかマチュピチュとかで……で、訪れたとある山奥の村落で、現地のガイドから特別に教えてもらってね。なんでも、ふだんは絶対に入っちゃいけないって「聖域」があるらしいんだ。神さまだか悪魔だか知らないけど、現地の精霊? みたいな存在が、スペシャルなパワーを授けてくれる秘密の場所があるって。で、俺がたまたま訪れた日が、なんでも50年に一回だけの、外からの人間が入ってもいい特別な日だったみたいで……。

◆それは、非常にラッキーでしたね。

D:まぁ蓋を開けてみたら、聖域っていっても遺跡とか神殿みたいな、そういう格式高い感じのものじゃなくて、山奥にある大きな岩の上で、そこで一晩、ただ毛布に包まっていただけなんだけど(苦笑)

R:それで、結果は?

D:てきめん・・・・だったよ。なにせ朝起きたら身体中、どこもかしこも虫刺されだらけ。全身をタッピングしたね。こんなふうに(と、全身に指を這わせるダグ)。

S:しかも後日調べてみたら、べつに「聖域」でもなんでもなかったと(笑)

D:最悪だよ。ただ騙されて、ガイドに高い案内料をぼったくられただけ。

R:まさに身の毛もよだつような「悪魔」的な体験ね。

(一同爆笑)

D:まぁ、ケガの功名……というのもヘンだけど、それからしばらくして、朝起きて、なんとなく頭の中にメロディが浮かんでいたんだ。それが今の「グレイ・ウォールズ」の原型になる曲で……あんがい、本当に「神さま」とやらが俺にインスピレーションを授けてくれたのかもしれないね。

S:そういって、毎回キミの思いつきに振り回されることになる僕らの身にもなってくれよ(苦笑)

R:それでも、今回ダグが捕まえてくれた「神さま」は、とびきりの「大当たり」だったみたい。

D:長くやってるからね。これくらいの「ごほうび」はあっても良いんじゃないか?

◆最後に、今後の計画について教えていただけますか?

ダグ: もちろんさ。すでに俺たちは新しい音楽を制作し、次のステップに進むためのストラテジーもある。ファンのみんなにとっても、これからのサプライズが待っていることを楽しみにしていてくれ。

◆本日は本当にありがとうございました。

インタビュアー/ジアンナ・グティレス

※ドラムのサイラス・ヤング氏は交通機関のトラブルで本インタビューには欠席した。

 

【ジェネリック・ローカルズの『グレイ・ウォールズ』:音楽界の創造性の停滞を示す警告/インサイト・エッジ  1月19日】

〈ジェネリック・ローカルズ〉のアルバム『グレイ・ウォールズ』が発売されてからはや半年、依然として各国のヒットチャートが『グレイ・ウォールズ』とそのアレンジ楽曲によって独占され続けているのは、音楽業界にとって警鐘を鳴らすべき事態であると考えるべきである。理由は言わずもがな、このアルバムは我々リスナーに何ひとつ特別なものを提供していないにもかかわらず、大勢の聴衆に受け入れられているからだ。

ローカルズの音楽は、創造性や独自性が欠如しており、その中には深みや刺激が全くない。『グレイ・ウォールズ』とその収録曲は、無機質で予測可能なメロディと単調な歌詞で満たされており、聴衆には何の刺激も与えていないと言わざるを得ない。

このアルバムの成功は、消費者がインスタントな音楽体験を求めていることを示唆しており、それは音楽産業全体の創造性の停滞を象徴していると言えるだろう。このような平凡な作品が成功する一方で、真の芸術的表現や革新的なサウンドを持つアーティストたちが無視されていることは、まことに由々しき事態である。

また、とある「信頼できる研究者」たちはこのアルバムの単調なメロディや陳腐極まりないの歌詞が聴衆の意識を洗脳し、大衆を従順な消費者に変えるための手段であると主張している。その背後には巨大な音楽産業――あるいは邪悪な軍産複合体の影があり、『グレイ・ウォールズ』自体が特定の政治的な意図や利益に沿った戦略の産物であると考えられる。それどころか、このバンド自体が実際には存在せず、昨今話題の自動生成AIと計算されたマーケティング戦略によって作り上げられた架空の存在である可能性もある。一連の事象は意図的にデザインされたものであり、聴衆を洗脳し、社会的な不満や独立した思考を抑制するためのものであると断言しても差し支えないだろう。

この驚くべき陰謀を一体誰が裏からコントロールしているのか? 考えるまでもない。それは政府だ。我々は現在進行形で国家が目論む恐るべき野望のメイルシュトロムに晒されているのだ。巨大な陰謀から大切な家族を守るためにはどうすればいい? 簡単なことだ。正義の弾劾裁判によって今すぐ大統領をセップクさせ、今すぐホワイトハウスを爆破しよう! /エズラ・ロス

 

【『グレイ・ウォールズ』、グラミー賞最優秀アルバム賞受賞の栄誉に輝く/ビルボード・マガジン 2月15日】

待望の瞬間がやってきた! 音楽界の最高峰であるグラミー賞において、ジェネリック・ローカルズの最新アルバム『グレイ・ウォールズ』と表題曲が、主要四部門から最優秀アルバム賞と最優秀楽曲賞をそれぞれ受賞、また最優秀ロック楽曲賞、およびフロントマンのダグ・ウィルソンが最優秀男性ロック・ヴォーカル・パフォーマンス賞を受賞し、怒涛の一挙「四冠」を達成。音楽史に「新章」の到来を告げた。

『グレイ・ウォールズ』はシンプルでありながら深遠な世界観を表現し、バンドのアーティスティックな成熟を証明した大ヒット作。先日も発売からわずか半年あまりでマイケル・ジャクソン氏の不朽の名作『スリラー』の売り上げ枚数を越えたことで業界とファンを驚かせたことは記憶に新しい。

受賞に際してダグ・ウィルソンは「これは俺たちではなく、世界中のファンのみんなが勝ち取った栄光だ。俺たちだけでは、決してここまで届けることはできなかった。本当にありがとう。死ぬほど感謝している」とコメント。

音楽史に燦然と輝く偉業を成し遂げた『グレイ・ウォールズ』は、今後も多くの音楽ファンにとって不滅の名作として記憶されることだろう。/ブルックス・モーガン

 

【ジェネリック・ローカルズ公式ホームページにアップロードされた声明/3月24日】

ジェネリック・ローカルズのファンの皆様へ、重要なお知らせ

当バンドに関する様々な噂がインターネット上で広まっているようですが、その中には真実とは程遠いものも含まれています。我々はここに、いくつかの不穏な噂を明確に否定します。

我々の音楽は、常にポジティブなメッセージを伝え、聴衆の心を元気づけることを目指しています。また、健康や安全に対する懸念があるとされる報告についても、我々はそのような主張を全面的に否定します。当バンドの活動やコンテンツは、すべて関連法規や健康基準に従っています。

報告された一連の事象については、我々には何の情報もなく、それが事実であるかどうかを確認する手立てがありません。我々は全てのファンに対し、音楽を楽しむ際に適切な注意を払い、リスクのない環境で楽しむようお願い申し上げます。

最後に、当バンドの公式情報は、すべて公式ウェブサイトや公式ソーシャルメディアチャンネルで発表されます。信頼できない情報源からの情報は慎重に検証する必要があります。我々の公式情報以外の情報については、その信憑性に疑問を抱くことが重要です。

ジェネリック・ローカルズは、常にファンの皆様に対して真実かつ透明性のある情報を提供することに努めています。今後も我々の音楽と活動を通じて、皆様に感動と喜びをお届けするために努力し続けます。

ご理解とご支援をいただき、誠にありがとうございます。

〈ジェネリック・ローカルズ公式サイト管理チーム一同〉

 

【メルボルン・クリケット・グラウンドを満席にした〈ジェネリック・ローカルズ〉の大規模ライブにおいて、本番前日に失恋して失踪したというサイラス・ヤングの代わりにチンパンジーにドラムを叩かせ、会場のファンが大爆笑するブートレグ映像/5月1日】

 

【音楽の奇跡? ジェネリック・ローカルズの『グレイ・ウォールズ』が病気と骨折を治癒? /Hygieia 6月号】

音楽は癒しの力を持つことが知られていますが、最新の報告によれば、昨年発売された〈ジェネリック・ローカルズ〉の大ヒットアルバム『グレイ・ウォールズ』が、奇跡的な治癒のパワーを示すことが相次いでいるという驚くべき情報が入っています。本誌に寄せられた報告によれば、このアルバムが怪我や病気、果てはいくつかの重大な健康問題を克服するのに役立ったとされています。

ユタ州にお住いのジョン・マックウェルさん(仮名)は長年重症化した糖尿病と闘病を続けていましたが、ある時期から『グレイ・ウォールズ』を聴き始めたところ、症状が劇的に改善したと証言しています。スミスさんの主治医は「グレイ・ウォールズの放つ心地よいリズムや周波数が、彼の免疫系を活性化させ、治癒のプロセスを加速させた可能性がある」と述べています。

さらに、ブルックリンで生活を営むサラ・ポーラーさん(仮名)も、アルバムを繰り返し聴いたことで怪我からの骨折が早期に治癒したと報告しています。彼女は「音楽が私の体内の細胞を活性化させ、骨折部位の修復をサポートしたのかもしれません。信じられないことですが、これはすべて事実なんです」と語っています。

他にも精神疾患に対する症状の緩和や「損傷した永久歯が生え変わった」などの報告も寄せられており、医学界と科学者は、これらの報告について慎重な立場を取り、音楽と健康の関連性についてはまだ研究が進行中であることを強調しています。ただし、これらの報告が注目を浴びており、音楽が心身の健康に与える影響についての研究が今後ますます重要となる可能性があります。

グレイ・ウォールズの持つ不思議な治癒の力はまだ未知数ですが、そのうち不治の病とされた癌にも効くようになるのかもしれませんね。/ソフィア・シンプソン

 

【全国のペットが飼い主に影響され、「グレイ・ウォールズ」を歌いだす! 愛らしい光景が広がる/クイック・ビディ 6月19日】

全国各地で気絶するほどキュートな光景が急増中!? 各ご家庭で毎日たくさんの愛情をくれるペットたちが、飼い主の影響を受けてあの〈ジェネリック・ローカルズ〉の名曲『グレイ・ウォールズ』を歌いだす様子が話題となっています!

(本来、当該動画のURL群がここに添付されていたが現在では失効している)

ご覧ください! 動画の中では犬や猫、小鳥など、さまざまなペットが飼い主の聴いているグレイ・ウォールズときに合わせて鳴き声や鳴き方を真似しています。なんてチャーミング! 動画投稿者の一人であるオースティンさんは、「私がグレイ・ウォールズを聴いていると、愛犬が嬉しそうに尻尾を振りながら一緒に歌ってくれるの! 病気になっちゃうくらいチャーミングな光景だわ! この子、前世は有名な音楽家だったのかも(笑)」と語ります。

一部の専門家たちは、ペットが飼い主の感情や行動に反応するのは、彼らが人間の言動を学習し、模倣する本能的な行動に起因すると指摘しているのだとか? う〜ん、本当だとしたら、とてもすごい現象ですね!

ペットたちの愛らしい行動は私たちに心温まる喜びを与えるだけでなく、グレイ・ウォールズの魅力と人々との絆を深めるきっかけとなっているのかも!?/maymay777

 

【ダグ・ウィルソン、アフリカの子どもたちにあの名曲を無料配布開始! /エキスパンション 7月7日】

音楽界の革新者として知られる〈ジェネリック・ローカルズ〉のフロントマン、ダグ・ウィルソン氏が新たな「挑戦」を開始する。なんとウィルソン氏はアフリカ中の子どもたちに向けて、ローカルズ最大の名曲として知られるグレイ・ウォールズのデータが入った特製のオーディオ・プレイヤーを無料で配布することを決定したというのだ。

この壮大なプロジェクトに対して、ウィルソン氏は次のようにコメントした。「ファンの支えや様々な、まるで魔法みたいな縁があって、俺たちは今世界で一番有名なミュージシャンになったわけだけど……なんだろうな? あまり上手くは言えないけど、こんな機会、俺が生きているうちにはもう二度とないと思うし、神さまから与えられたこのチャンスを、俺は世界中のみんなと分かち合いたいんだ。頭の中で鳴り続けているこの幸福な瞬間を、どこまでも広めたい。この輝く奇跡で、世界中を埋め尽くしたい。そんなふうに、俺の本能が叫んでいるんだ。俺たちの音楽をまだ知らない君へ、生まれてきてくれてありがとう。世界に祝福と、いっぱいのラブを!」

この途轍もないプロジェクトは、氏が新たに立ち上げた慈善団体〈ウィルソン・ウルトラハッピー・ファイナルデスティニーファンデーション(WUF)〉によって支援されており、数百万台のオーディオプレイヤーがアフリカ全土に配布される予定。各プレイヤーにはアルバム「グレイ・ウォールズ」とそのアレンジ楽曲がたっぷり十数時間ぶん収録されており、子どもたちがいつでもどこでも音楽を楽しめるよう設計されているという。

ウィルソン氏の情熱と信念がアフリカの子どもたちにどのような影響を与えるのか? 彼の果てしなき「挑戦」の今後が期待される。/マクシム・テマリスキー

 

【ミネイスカ・トリビューン主催・ちびっ子作文コンクール優秀賞作品「ぼくのまちに大スターがやってきた!」/ミネイスカ・トリビューン 7月22日】

今日は特別な日だった。お母さんと一緒にジェネリック・ローカルズのライブに行ったんだ。ぼくの学校では、去年の夏休み明けに一気にグレイ・ウォールズが流行り出して、みんなが「あの曲すごいよね!」とか「もう何回も聴いてる!」って話してた。でも、正直言って、ぼくはその流行にはあまりのれて・・・いなかった。みんなが夢中になっている中で、毎日ぼくはちょっぴり距離を感じていた。

ライブ会場はミネソタ州のぼくたちの小さな町には似つかわしくないほど大きくて、ライトがキラキラしていた。見慣れたスケートホールが、今日だけはぼくの知らない、きらびやかな世界になっていた。お母さんと手をつないで会場に入ると、自然と心がドキドキしてきた。こんなことは一生に一度のチャンスかもしれない。ほんとうに、ぼくらの町に大スターがやってきたんだ!

ライブが始まると、ダグ・ウィルソンの力強い歌声が会場に響きわたった。彼は本物のロック・スターで、有名になった今でも週に何回も、世界中のあちこちでライブしているらしい。彼がこの日三回目になるあの名曲――グレイ・ウォールズを歌い出すと、みんなも一緒に歌い始めて、ぼくも自然と口ずさんでいた。でも、一番びっくりしたのはドラムだった。本番ではザコツシンケイツウ? で欠席したドラマーに代わって、なんとチンパンジーがドラムを叩いていたんだ! そのチンパンジーは「ピエール」って名前で、すごく上手にドラムを叩いていた。会場のみんなが拍手して「ピエール! ピエール!」って叫んでた。ぼくも思わず声が枯れるまで応援していた。最終的に、バンドは七回もグレイ・ウォールズを演奏してくれた。

ライブが終わったあと、お母さんが「どうだった?」って聞いてきた。ぼくは「すごくよかった! ピエールが特に最高だったよ!」って答えた。お母さんもにっこり笑って「また行こうね」って言ってくれた。

今日は本当に忘れられない日になった。ぼくもクラスのみんなみたいにグレイ・ウォールズが、なによりも、ぼくらの小さな町でも全力で歌ってくれたダグのことがほんとうに大好きになった。明日学校に行ったら、友だちにこのことを話すのが楽しみだ。ライブの思い出は、ずっと心に残ると思う。

この日記を読んでる未来のぼくへ、今日という日の感動を忘れないように。ちっぽけだと思ったぼくの町も、たしかに広い世界に繋がっているのだという、胸いっぱいの感動を! /エリヤ・リードくん(11歳)

 

【異端の台頭:ジェネリック・ローカルズのアルバム『グレイ・ウォールズ』を経典とするカルト教団が勢力を拡大中/パルス・フィード 8月9日】

新興のカルト教団が、ジェネリック・ローカルズのアルバム『グレイ・ウォールズ』をその教義の中心に据えて急速に勢力を拡大しているとの報告が相次いでいる。新自由主義を信奉する西海岸の若手実業家グループを中核とするこの集団は、楽曲の持つソリッドなメッセージ性や極限まで削ぎ落されたミニマルなメロディを不可侵の「聖典」として再解釈し、インターネットを介したグローバルなコミュニティを通じて国内外で新たな賛同者を獲得し、その教義を幅広い層に広めているという。

一見してどこかファニーな出来事のように思われるが、しかし歴史を紐解けば、過去にはヒッピー文化を引き継ぐコミュニティによる殺人事件や集団自殺に発展した事例も存在する。

当局は情報を共有し、この教団の活動についての監視を強化し、彼らが社会に及ぼす潜在的なリスクに備えているという。/リアム・ミラー

 

【緊急警告! UFO目撃証言の影に政府の陰謀あり! /インサイト・エッジ 8月30日】

未確認飛行物体UFOの目撃者、ホセ・ロドリゲス氏(仮名)は自身の奇妙な体験を物語る。

「その日の夜、あたしはテラスに置いた椅子に腰掛けながら空を見上げて、グレイ・ウォールズの楽曲を聴きながら星を眺めとりました。ええ。マイブームなんです。食後に好きな音楽聴きながら天体観測するのが。なかなかロマンチックやろ? で、そんとき、突然、ピカーッと輝く光のようなものがいきなり空に現れましてん。最初は普通の飛行機かもしれへんと思いましたけど、形がね、まったく異なっとりましたからね。ほんで、その光が次第におっきくなって、なんとびっくり、あたしの近くまで接近してきたんです」

ロドリゲスさんは続ける。「その光が近づいてくるにつれて、なんだか不思議な感覚に包まれとりました。なんっていうか、心の奥底からハッピーな気持ちが湧き上がってきましてん。まるで、全身が宇宙の一部になったみたいで、こう、バーッと、すべてが『合体』しとるかのような感覚やったんです。いわば、宇宙とのセックスやね」

彼はまた、こうも語る。「その光が上空を通り過ぎると、ますます幸福感に包まれました。目ん中がピカピカ虹色の光でいっぱいになって、えらく気持ちよくなってきましてね。……いえ、違います。ノー・ドラッグです。キメてないです。ほんまに。ほんでね、気づいたら光はなくなってて、いつの間にか、元の静かな夜空に戻されてました。やけど、その体験はあたしの心に一生残ることは間違いなしやね。ええ、ほんまに……夢みたいに綺麗でした」

驚くべきことに、このようなUFO目撃証言は例の『グレイ・ウォールズ』に熱中している人々から多々報告されており、背後に国家的陰謀が蠢いていることは疑うべくもない。もはや一刻の猶予もない。今すぐ大統領はセップクしてホワイトハウスを爆破せよ! /エズラ・ロス

 

【世界各国で出生率が急上昇! そのカギとなるのは……あの名曲!?/ワールド・トライビュー 10月7日】

世界各国で人口が爆発的に増加しているとの報告が寄せられている。この驚くべき現象の影には現在進行形で歴史的大ヒットを記録し続けているあの楽曲「グレイ・ウォールズ」の影響である可能性が高く、世界中の専門家たちが注目を集めています。

国連の統計によると、グレイ・ウォールズのリリース以降、多くの国で出生率が急激に上昇しています。特に、アメリカ、ヨーロッパ、アジア諸国では出生率の増加がめざましく、なんと前年度比で出生率が50%以上増加した地域も報告されています。

心理学者や社会学者の間では、グレイ・ウォールズが人々の心理に与える影響についての研究が進められています。本件に関して、心理学者のジョン・スミス博士は「グレイ・ウォールズは人間の脳にある特定の神経回路を刺激し、幸福感や安心感を高める効果があるようです。これが、カップルの関係をより親密にし、結果として出生率の増加に繋がっているのではないか」と見解を述べています。

各国で少子高齢化が加速する中、人口の増加は一見して手放しで喜ぶべきニュースのように思えますが、しかし多くの国が急激な人口増加に関連する課題に直面しており、社会インフラや公共サービスの提供に新たな課題が生じています。国際的な政府や機関は、この人口増加の急速なペースに対応するための戦略を模索しています。特に、教育、健康、住宅、雇用などの分野での対策が急務となっており、この前例のない現象が今後どのように進展するのか。各国首脳陣には慎重な対応が求められています。/アクセル・クック

 

【911への通話記録/11月1日】

『――はい、こちら911。緊急事態でしょうか?』

『お願いします! 助けてください! 夫と、それと子どもたちが……今朝から、何だかようすがおかしいの! なんだかみんな、ヒトデ・・・みたいで……ああ、どうして……?』

『落ち着いてください。『ようすがおかしい』とは、具体的にはどういう状態ですか?』

『先月、リッチーがいなくなったばかりで……リッチーというのは、ペットのヨークシャテリアで……ああ、神様……!』

『分かりました。住所を教えていただけますか?』

『ス、スプリングフィールドの、エルム街123番地です。急いでください……! 早く……!』

『ただちに即応チームをあなたのいる場所へ派遣します。その間、可能な限り、ご家族から離れた安全な場所に移動してください』

『でも、家族をこのまま放っておくわけにはいかないわ……! 助けなきゃ……!』

『あなた自身の安全も重要です。私たちのチームがすぐに到着し、必ずあなたとご家族の安全を確保します。この電話は携帯電話ですか? だとしたら、絶対に通話は切らないで。有線なら、今すぐ電話切って、安全な場所へ。隠れられる場所か、シェルターのような設備は?』

『い、今はクローゼットの中で、アイフォンから掛けています。先月交換したばかりの、新品です』

『よかった。電話はこのままで、私と一緒にいてください。助けが向かっています。あなたの家族の中で最近、何か健康上の問題を経験した人はいますか?』

『いいえ、昨日まではみんな元気だったし……先週も、家族でローカルズのコンサートに行ってきたばかりなのに、どうして……?』

『(小さなため息)わかりました。教えてくださって、ありがとうございます。私たちのチームがすぐに到着します。安全に気をつけて、私たちに任せてください。耳栓のようなものはお持ちでしょうか?』

『急いでください……今も、家族が私を探していて……あとどれくらい耐えられるか、分からなくて……』

『もうすぐ到着します。順調です。がんばって。あともう少しだけ、お待ちください』

『(連鎖する打突音)きゃあ!?(硬質な物音)……ああ、もう駄目かも……神様……ああ、あれは……リッチー?』

『待って! 扉を開けないで――』

『みんな、そこにいたのね――』

(通話終了)

 

【日本のVtuber・寝耳不視子ねみみみずこ」の雑談配信より/11月8日】

「――えーっと、なんだっけ? 去年くらいから、ずっと流行ってんじゃん? ジェネリック・ローカルズの『なんとかウォール』ってやつがさ? あーしもさ、ちょっと聴いてみたんだけどさぁ、これが正直、よさがまったくわかんないんだよねぇ。あんま言い過ぎると炎上するかもだけど、みんなホントにこれが「良い」って思ってんの? 偉い人たちが褒めてるから、なんとなく良さげに感じるだけで、権威主義なんじゃないの? なんかさ、そういう構造自体が、すっごく気持ち悪くない? あーしは気持ち悪いって思うなぁ! ……あ。スパチャありアとうございま〜っす。……、……そ〜だよな〜! わかる! めっちゃわかるよぉ! なんかさ、あーしの周りでハマってる人たちもすげー勢いで鬼詰めしてくるし。なんか怖いんだよね。布教の勢いが。宗教かよ、ってカンジでさ。全体的に必死すぎンだよね。ウケる。

……ま、そもそもあーしの中学のときの音楽の成績、『1』だったんだけどさ。知らんけど。

 

【世界的指揮者の発言:「グレイ・ウォールズに触発され、すべての音源を処分しました/トゥデイズ・グローブ 12月19日】

国際的な指揮者として広く知られるアレクサンドラ・ヴォルフソンが、〈ジェネリック・ローカルズ〉のアルバム『グレイ・ウォールズ』に触発され、驚くべき決断を下したことを語った。なんと彼女は、個人的に所有しているすべての音源、クラシック音楽の録音、CD、バイナル、デジタルファイルなどを一掃し、手放したという。

このあまりに思いきりのよすぎる「断捨離」行為に対して、ヴォルフソンは記者団に「『グレイ・ウォールズ』以外の音楽には、もはや関心がありません。この楽曲はあまりに完璧で、一部の隙もありません。もはや私の一切の魂と感覚はこの奇跡の音源に捧げられており、それ以外のものはもはや必要ありません。今の私は絶え間ない至福と恍惚の中にいて、我々がこれまで築き上げてきたと錯覚していた音楽史は、完全に無為だったのです」とコメントしている。

彼女の決断は、音楽愛好者や業界関係者の間で賛否両論を巻き起こしている。貴重な音源の蒐集家としても著名なヴォルフソン氏のコレクションには、表出していない貴重なクラシック音楽の録音も含まれていたという。/ウェイロン・バトラー

 

【新自由主義者の楽園:ジェネリック・ローカルズの信者たちが海洋上に独立国家を樹立/インターナショナル・バブル 1月1日】

ジェネリック・ローカルズの名曲『グレイ・ウォールズ』を信仰する新自由/加速主義者たちが、海洋上に独立国家を樹立した。

この新興国家は〈グレイ・ウォールズ・ヘブン〉と名付けられ、賛同者たちは『グレイ・ウォールズ』を「経典」と位置づけ、その音楽を信仰と結びつけ、独立国家の建設に着手したという。

グレイ・ウォールズ・ヘブンの国家元首であるエミリオ・サンチェスは「ジェネリック・ローカルズの音楽は、個人の自由と共感を高める力を持っており、それを国家として具現化したのです。まさしくグレイ・ウォールズは古色蒼然とした旧体制に対する『革新』の象徴で、我々は規制や税制に縛られない自由な環境で、革新的な技術や新しい経済モデルを試すことを目指しているのです」とその思想を語る。

〈グレイウォールズ・ヘブン〉は、最先端の技術を駆使して建設されており、完全に自給自足可能なエネルギーシステムや、最新の医療技術を導入している。また、住民は高い自由度を持ち、街中に配置されたスピーカーを介して二十四時間体制で『グレイ・ウォールズ』を楽しむことができるという。

国際社会は、この海洋上の新たな国家の成立について議論が分かれており、一部の社会学者たちはこれを新しい一大環境型実験と見なし、可能性とリスクの両方があると指摘しているという。/リアム・ミラー

 

【コラム:変容する資本主義の果てに/ヴィジョン・ヴァイヴ 2月5日】

「シジュウカラ」という鳥をご存知だろうか? 彼らは鳥類でありながら非常に高度な知性と社会性を有し、鳴き声による言語コミュニケーションや翼によるジェスチャーなど有用な形質を発現させると、交流によって同種族間でその習性を伝播させるのだという。

それと同様の現象が、急速に企業間に広まりつつある。

言わずもがな、「それ」は我々の動向をデータ化し、それに最適化された広告を適切に宛がうことに血道を上げている。我々のすべてを収益化するために、企業は手間を惜しまない。企業は我々の暮らしにも、健康にも、人生の悩みや音楽の嗜好にはまるで興味がない。用があるのは収益化のことだけで、我々の抱える諸問題か良化しようが悪化しようが、それは端から彼らの興味の外にある。

バイヤーから買い上げた高価なデータ・セットを用いて、我々の端末やブラウザから秘密裏集積されたユーザーデータから名寄せされ、個々人に寄り添うように懇切丁寧に組み上げられた追跡型広告を、悪質なスピアフィッシングを、アストロターフィングによる電子的な欺瞞行為を用いて、丁寧に寄り添うように、企業は我々を丸裸にして「商品」にする。

斯様かような資本主義の坩堝るつぼの底で我々は長年暮らしてきたわけだが、しかし現在、その構造のすべてが加速度的に陳腐化し、過去のものになりつつあるという。

さて、いささか前置きが長くなり過ぎてしまった。ブームに敏感なあなたなら私が何を申し上げたいのか、すでにお分かりだろう。そう、『グレイ・ウォールズ』である。〈ジェネリック・ローカルズ〉によって生み出されたこの途轍もないモンスター・ソングは音楽番組や有線放送だけでなく、我々のウェブ上での生活様式さえ一変させつつある。

ウェブ上で中々日の目を見ない弱小アマチュア・シンガーとして長年活動してきた〈V・V〉は此度のブームをこう語る。

「これまで、いくら私がブルーノ・マーズやテイラー・スウィフトの名曲をカバーしてもみんな見向きもしてくれなかった。精々、上手くいっても100再生くらいだったかな? それがグレイ・ウォールズをカバーしてみたら、もうびっくり。ものの数日で数百万回再生されて私もインフルエンサーの仲間入りってわけ。今はグレイ・ウォールズのバージョン違いを毎日アップロードしている。色々あるわ。レゲェ風に、ダンス風、メタル……日本人はハツネ・ミク(※日本製のボーカル・シンセサイザー)を使ってるみたいだけど、みんなどれも喜んでくれる。広告収入で病気のママを病院に通わせることができたし、ほんとうにジェネリック・ローカルズには感謝している」

現在、ユーチューブで確認できる再生数ランキングの九割以上がグレイ・ウォールズのカバー動画で席巻されており、依然としてブームに陰りはみえることはない。

グレイ・ウォールズ関連コンテンツに広告を貼りつけるだけで、各社には従来の数倍に匹敵する広告収入が発生するようになったという。つまりユーザーの動向をいかに収益へと変換するか大企業同士で凌ぎを削り、悪辣な手管手練を弄する時代は唐突に終わりを告げ――グレイ・ウォールズ。それが資本主義の「答え」となったというわけだ。すくなくとも、この狂熱的なブームが終わるまでは。

「踏み出すのは怖いけれど、それは誰だって同じ。だけど同様に、チャンスも平等。あなたもグレイ・ウォールズをコピーして、一緒に夢を掴みましょう!」

現在〈V・V〉の動画は総計一億回ほど再生されており、近いうちユーチューブを始めとする各社は自社のサーヴィスをグレイ・ウォールズに特化した仕様に作り替えることを画策していているという。/メイソン・ジョンソン

 

【████████ 2月29日】

チベットの山岳地帯において、新たな霊的指導者とされる「聖人」が発見された。

報告によれば、この聖人はラサ近郊の山中で発見され、現在は現地民の手によって厳重に保護されている。

地元の僧侶たちは、この新たな聖人の出現がチベットの霊的な伝統に新たな活力をもたらす可能性があると期待しており、彼人の存在が調和を促進することを願っている。

 

【チベット旅行中に失踪したイギリス人男性の捜索願/3月8日】

ロンドン在住のジョン・ハミルトンさん(35歳)が、チベットへの旅行中に行方不明となりました。ジョンさんは、2024年4月末にチベットへ向けて出発し、現地でのトレッキングや文化体験を楽しんでいましたが、5月10日を最後に連絡が途絶えています。

失踪者の詳細情報:

氏名:ジョン・ハミルトン

年齢:35歳

性別:男性

国籍:イギリス

身長:180cm

体重:75kg

髪の色:茶色

目の色:青色

特記事項:右腕に「Monotone Sky」のタトゥーあり

最後の目撃情報:日付:5月10日

場所:チベットのラサ近郊

服装:青色のジャケット、カーキ色のパンツ、登山靴、胸元に〈Generic Locals〉とプリントされた黒色のバンドTシャツを着用

ジョンさんは、アウトドア愛好家であり、経験豊富なトレッカーとして知られています。家族や友人は彼の失踪を非常に心配しており、早急な捜索活動を強く求めています。現地の警察や捜索救助チームは、すでに捜索を開始していますが、追加の支援と情報提供を広く呼びかけています。

情報提供のお願い:ジョンさんに関する情報をお持ちの方は、以下の連絡先までご連絡ください。

イギリス大使館(チベット):+████████████

チベット警察:+████████████

緊急連絡先:+████████████(イギリス外務省)

ジョンさんの安全な帰還を願い、皆様のご協力をお願い申し上げます。

ハミルトン家より

「ジョンは冒険を愛する心優しい息子です。情報提供をどうかよろしくお願いいたします。」

 

【投稿動画のコピー/4月9日】

※転載を繰り返されたため、当該動画はかなり不鮮明になっている。

超満席の観客席、ステージ上には熱唱するダグ・ウィルソン、すっかりお馴染みになったチンパンジーがドラムを叩いている。組み上げられたセットの上部には『12時間耐久! 朝まで死ぬまで全曲「グレイ・ウォールズ」祭り!』と記載された豪奢な横断幕が認められる。

ステージ上から、ダグ。『残り四時間! へばってないか!? ロックの夜明けまで、まだまだ……(野太い歓声とノイズで聴きとれず)』

煽られた数万人規模の観客たちは怒涛の勢いで拳を突き上げ、獣染みた咆哮で地面が揺れる。

ふいに客席中腹から、縦方向になにかがにょきりと差し伸ばされる。まるで植物の成長を早回しにしたかのような不自然な光景。照明で逆光になっているため、映像は不鮮明。人ごみの中から三メートルほど伸ばされたそれは先端がラグビー・ボール状に膨らみ、どこか「マッチ」に似た形状を有し、微かに左右に揺れている。

一斉に、罵声が浴びせかけられる。「長物は禁止だぞ!」「旗、降ろせ!」「殺すぞ!」「聞こえてんのか! タコ!」「粗チン!」「(不適切な表現)」

しばし、殺気立った罵詈雑言がその謎めいた物質に向けられ、唐突に、くるりとそれが反転する。逆光の中でそれは黒々と屹立して――次の瞬間、気が狂わんばかりの金切り声が、マイクの許容振幅をたやすく振り切る。

画面が無茶苦茶に暴れる。ブロックノイズが吹き零れ、しばし風の音と雑音が聴覚を埋め尽くす。

ようやく焦点を結んだカメラが走る足元へ向けられる。撮影者は走っているらしい。映像は千々に乱れ、激しく揺れ動き、無数のスニーカーの爪先や踵がだばだばと足下の人工芝を蹴り上げる。あらぬ方向に向けられたカメラの先で、大勢の群衆がドミノ倒しのように折り重なり、積み重なっている。それらは超冬のために身を寄せ合う昆虫のように密集して、堆積し、その場から動かない。彼らから漏れ出る「ぎゅう」という無体な音の連なり。

垣間見えた「人の山」に頓着することなく、撮影者は遠ざかり、足早に動き続ける。

再び高度を増した画角の中で、大勢の人々ががむしゃらに走り続けている。どういう了見だろう。殺到する圧力に耐えかねたのか、いくつかの照明器具が落下し、しとどに降りかかり、火花を散らす。愚直に撮影され続ける視界の端で、蟻のように群れ連なる人々の上でぽっと火の塊が爆ぜる。その真下で人型の炎が続々と生み出され、元気よく手足を振り回す。燃えながら踊り狂う。意味を持たない音の圧力が可聴域を無暗矢鱈と埋め尽くす。

おもむろに撮影者は背後を振り向く。依然としてどろどろと蠢く人の群れ、その地平の奥で、ヤシの木のような背の高い謎めいた物体がいくつもいくつも、幾十も生え出ている。その根元にあるのは、バンドTシャツを纏ったやせ細った身体。

ステージの上には誰もいない。にもかかわらず、撮影者のマイクは驚くほど明晰に、あの歌を捉え続けている。暗転――/撮影者不明

(※アップロードから直後、当該映像は「著作権侵害」を理由に削除された)

(※当該動画はダークウェブを中心に高値で売買されているが、一説によると当局が買い占めているらしい)

 

【政府によるグレイ・ウォールズ回収に対する緊急声明/10月2日】

アメリカ合衆国政府より親愛なる国民の皆様へ

現在、アメリカ全土に広がっている諸現象に対して、合衆国政府は緊急措置を講じることが決定されました。これまでの調査の結果、一連の現象は音楽アルバム「グレイ・ウォールズ」と深く関連している可能性が高いと判明しました。つきましては、直ちに以下の指示に従ってください。

〔グレイ・ウォールズの全音源回収〕

すべての形式(CD、レコード、デジタルファイル等)のグレイ・ウォールズを回収し、指定の回収ポイントに持参してください。

一度でもグレイ・ウォールズを再生した形跡のある機器(スピーカー、イヤホン等)も同様に回収対象です。

〔公共放送とインターネットストリーミングの停止〕

すべての公共放送局およびインターネットストリーミングサービスにおいて、グレイ・ウォールズの配信を即刻停止します。

グレイ・ウォールズに関連する情報や、一連の現象に類するを目撃した場合、政府専用ホットラインに通報してください。

以上の指示に従わない場合、強制的な措置を取ることがあります。国民の皆様の協力が必要です。国家を襲うこの未曽有の困難を乗り越え、愛する家族や友人の安全を守るためにも、共に力を合わせましょう! /アメリカ合衆国政府

 

【グレイウォールズ・ヘブンにおける全住人一夜にして消失/パシフィック・ブレーキング 11月12日】

気鋭の資本家によって建国された洋上国家〈グレイ・ウォールズ・ヘブン〉から全住人――およそ三千人が失踪した。高度な技術と豊かな資金力を背景に、海洋上に築かれたこの都市は近未来的な生活を謳歌する住人たちの楽園として注目を集めていた。

当局によると、数日前から都市中枢部との連絡が途絶えており、定期点検のために訪れたスタッフが都市から住人がいなくなっていることに気づいたことで事態が発覚したという。

都市上にある家屋や職場はまったくの無人状態で争った形跡や大規模な暴動が生じた記録はなく、各所に生活の痕跡がそのまま残っていることが事件の怪奇性を高めている。

この未曽有の「集団失踪」に対して、アメリカ政府と国際連合は合同捜査チームを直ちに派遣し、都市のインフラや監視カメラ、通信ログなどを徹底的に調査したが、現在のところ有力な手がかりは今にいたって見つかっていない

政府は、住人の安否確認と原因究明に全力を尽くすと発表し、緊急ホットラインを開設した。国際社会もこの未曾有の事態に対し協力を表明しており、一刻も早い解決が求められている。/リアム・ミラー

 

【グレイ・ウォールズ回収場で暴動発生、市民が殺到し大混乱に/インターナショナル・バブル 12月8日】

ロサンゼルス市内のグレイ・ウォールズ回収場で大規模な暴動が発生し、数千人の市民が殺到する事態となった。この未曽有の大事件は全国的な混乱を引き起こし、政府の対応が急務とされている。

一連の事態を受け、ロサンゼルス市内には先月末からグレイ・ウォールズに関する音源の回収場が設けられており。本日午前11時ごろ、市は警備員と警察を配置して厳重な警備体制を敷いていたが、回収場の開門と同時に群衆が一斉に殺到し、バリケードを突破。回収場の職員が対応しきれず、暴徒化した市民が回収された音源を強奪しようとして大規模な混乱が発生したという。警察が催涙ガスやゴム弾を使用して暴動を鎮圧しようとしたが、殺到した数百人規模の暴徒たちはこれに熾烈に抵抗し、事態は一層混迷を極めた。

この暴動によって、少なくとも80人が負傷し、そのうち20人が重傷とされている。また、回収場の設備や周辺の建物にも甚大な被害が出ている。警察は100人以上の暴徒を逮捕しましたが、現場は依然として混乱が続いている。

現場に居合わせたエズラ・ロスさん(41歳)は、「私は音源を返却するために並んでいたのに、突然暴徒に襲われて死ぬかと思った。政府の回収計画が不十分だった。もっと効率的に回収する方法が必要だ。このような無策を振り翳す無能な大統領はセップクして、今すぐホワイトハウスを爆破しろ!」と強く訴える。

ロサンゼルス市長は緊急記者会見を開き、「市民の安全が最優先です。このような暴力行為は許されません。迅速に事態を収拾し、再発防止に努めます」と今後の方針を述べた。また今回の事件を受け、政府は回収方法の見直しと、より安全な回収体制の確立を急ぐと声明を発表した。

今回の暴動は、グレイ・ウォールズの回収の困難さを浮き彫りにした。現状、拡散したグレイ・ウォールズの回収率は全体の2パーセント程度に留まっており、政府は可及的速やかな対応を迫られている。/クレア・ペレス

 

【ベース担当者:サム・オルティースに関する報告 12月15日】

死にました。

挫滅ざめつしたそうです。

 

【報告書】

報告書作成日: 12月21日

報告者: 警視庁警備局特殊対象対策班 ███████

〔事案概要〕

5月14日、東京都内で発生した「対象」による大規模な暴動に対する鎮圧作戦の結果を以下に報告します。

〔発生状況〕

午前10時頃、都内各地で「対象」が発生。かつてない規模。

〔作戦開始〕

特殊対象対策班(STRU)は出動命令を受け、現場に到着。「対象」の鎮圧を試みました。以下は主要な作戦の進捗と結果。

〔第一次接触〕

時間: 午前11時46分

場所: 新宿駅前

状況: 相当数の「対象」が発生。駅前広場を占拠。対策部隊及び機動隊が包囲網を敷き、非致死性のガスとスタンガンを使用して鎮圧を試みるも、効果なし。刺激によって「対象」が激化。事態の早期収拾が困難に。

〔第二次接触〕

時間: 午後1時24分

場所: 渋谷スクランブル交差点

状況: 包囲網を突破した「対象」が通行人を襲撃。特殊急襲部隊(SAT)を投入し制圧を試みるも、隊員多数が負傷。一般市民の避難が困難を極める。

〔第三次接触〕

時間: 午後3時33分

場所: 皇居前広場

状況: 大規模発生した「対象」が皇居方面に向かってなだれ込む。対策本部及び第一機動隊が最終防衛ラインを敷き鎮圧を試みるも、これに失敗。多数の部隊員が重傷を負い、一部が死亡、もしくは行方不明となる。

〔結果〕

鎮圧失敗: 以上の接触を通じて、「対象」の鎮圧に失敗。

被害状況: 部隊員128名が重傷、うち21名が意識不明の重体。456名が軽傷、64名死亡。一般市民においても死傷者と行方不明者が続出。計測は不能。

対応: 状況の収拾が困難となったため、都内各所を封鎖、検問の設置。自衛隊の支援を要請。

〔今後の対応〕

追加調査: 「対象」の発生原因と経路、その背後にあるメカニズムを調査中。

対策強化: 非致死性の制圧手段の再評価と新たな対策の導入を検討。

市民保護: 避難指示の徹底と安全な避難経路の確保。

〔結論〕

今回の鎮圧作戦は、「対象」の予想外の耐久力と攻撃力により、失敗に終わりました。今後、事象に対する原因を究明し、より効果的な対策を講じる必要あり。

以上、報告致します。

 

【経過観察】

被験者番号009

年齢: 35歳

性別: 男性

記録担当: ████████████

被験者はこれまでGとの接触が認められていない35歳の成人男性。意識、および身体機能は清明。先行事例と同様に、被験者はあらかじめ個室に隔離し、室内に設置したスピーカーを介して効果が認められる72時間を目途に絶えずGに曝露させ続けた。

〔第1週目〕

身体的変化:当該器官に対する変化は認められず。しかし声帯の過活動が確認される

行動観察:被験者はGを繰り返し歌い続けている。歌唱中に興奮状態になることが多い。

〔第2週目〕

身体的変化:頸部の発達を確認(2cm)

肩や腕の筋肉が若干の萎縮を始める。

行動観察:被験者は歌唱の頻度が増し、覚醒中、ほとんどの時間を歌うことに費やす。食事や睡眠の時間も減少傾向にある。

〔第4週目〕

身体的変化:頸部が著しく発達(約15cm)

体重の減少と筋肉の萎縮が見られる。呼吸が浅くなり、体毛と爪が剥離し始める。

行動観察:被験者は一日の大部分を歌唱に費やし、他の活動をほとんど行わない。食事や水分摂取を拒否。質問に対する応答は減少し、歌唱が優先される。以降、栄養補給は経口外摂取によって敢行。

〔第8週目〕

身体的変化:頸部が驚異的に発達(約50cm)

腕の筋肉がほぼ完全に萎縮。反対に、頸部と脚部器官の筋肉量が爆発的に増大。生殖能力を除く、大多数の内臓の機能低下が確認される。推論通り、Gが被験者の身機能を「より適切な」形態へ作り替えていると思われる。

行動観察:被験者はGの歌唱を続けることに全力を注ぎ、他の刺激にまるで反応しなくなる。

※備考:ささやかな行き違いから、実験中に当機関の職員である████████のG曝露時間が基準値を越える。検査後、新たにナンバーを割り当て実験棟へ配置換え・・・・。達者でな。

〔第12週目〕

身体的変化:頸部が発達(約90cm、記録開始から総計200cmを突破)

口部が異様なまでに拡大し、頸部及び咽頭部、それと脚部のみが強靭に発達。心拍数と呼吸は最低限に維持されているが、生殖能力を除く他の器官の機能がほぼ完全に停止。両腕および口部を除く主要感覚器官の退化を確認。実験には倫理及び安全保障上の問題が伴うが、おそらく被験者同士の生殖は可能と推測される。

行動観察:実験開始前に観察された被験者固有の意識活動は認められず。声帯に対する異様な発達が確認され、歌声は大きく、明瞭。Gのオリジナル盤と酷似した非常にクリアな発声を可能とする。歌唱以外の自発的行動は見られず、生命活動の維持が困難になる(これ以上の延命には生命維持装置が必要か? )。

結論:被験者はGの歌唱を継続するために身機能が著しく変形し、いわゆる「クリスマス・チキン」状に変質した。歌唱に対する強い欲求と執着が見られ、性欲を除く他の生理的欲求は消失。この過程は不可逆的であり、医学的介入が困難な状態に至る。今後の研究では、早期発見と治療法の確立が急務とされる。

※備考: 一連の観察実権は倫理的な問題を多分に含むため、記録の凍結と実験棟内の被験体群に対する安楽死が検討されている。

 

【ダグ・ウィルソンがすべての痕跡を消し去ったあと、彼の自宅で発見された音声メッセージより/作成日:不明】

「もううんざりだ」

「俺はただ、頭の中に思い浮かんだ歌とメロディをパッケージしただけだ」

「べつに、誰からも命令されたわけじゃないし、脅されたわけでもない」

「『責任』……みたいなものは感じなくはないけど……だけど、あれが世界中に広がったのは、なにも俺のせいだけじゃないだろ?」

「みんなが、自分から進んで選んだことだ」

「だから俺は……俺は……」

(嗚咽と数分間に渡る中断)

(直後、たがが外れたかのように繰り返される笑い声)

「これ以上、俺に何が出来るって言うんだ?」

(乾いた破裂音)

 

【各種媒体に投稿された、各地で撮影された動画群】

文字通り、首を長く差し伸ばした生き物たちが、都市を、生い茂る森林の彼方を、丘陵を、砂漠を、地平線を覆い尽くしている。それは一見して絶叫する鶏のおもちゃ――いわゆる「シャウティング・チキン」を思わせるどこかユーモラスな形状を有している。異常に発達した頸部の先、頭部に類すると思われる部位には口部と思しき器官だけがぽかりと穿たれ、ほかの器官はめっきり退化している。それ以外、必要ないからだ。

それらは朗々と歌い続けている。空へ、地へ向けて。歌声はどこまでも広がり、のびやかに伝播する。

曲目は、言わずもがなあの歌だ。

 

【とある村落に伝わる寓話】

天地創造の初め、至高神アンカリは人々に喜びを与えるために美しい旋律を生み出した。しかし悪しきチャコロはその力を妬み、それを用いて人間の魂を奪うことを企みた。そして実際にチャコロはアンカリの旋律を盗み、〈不吉な歌ウィワカナ・ウノ〉を作り出した。

悪しき者の声をきく者はいない。よってチャコロはこの歌を鳥や獣たちに授けることで、巧妙に人々に語りかけた。「この歌を聴けば、とこしえの光明と魂の安らぎが手に入る」と。善良なる人々はこれを信じ、諸手をあげて喜んだ。

人々は獣や鳥と混ざり、溶け合い、朗々と歌い続けた。それを聴く者の魂は天界へと近づき、まなこは虹色に濡れ、心中はしばし小川のせせらぎのように凪いだように思われたが、それこそがチャコロの姦計である。七つの月を乗り越えるころにはすっかり堕落していた。歌は腹の中で黒く腐り、人々の魂は悪しきチャコロによって大いに歪められた。

歪められた魂は救えない。歪み者たちは不吉な歌を昼夜問わず口ずさみ、その歌声はいくつもの山を越え川を越え響き渡り、多くの村々が穢れて歪んだ。

人々の堕落に至高神アンカリは激怒した。至高神は静けさを求めた。地上に火と稲光をもたらし、これを浄めることを求めた。人々は至高神の教えに従い、数多の喉仏に刃を突き立て、これを撥ね、また不吉さが染み入る前にその耳を根元から裂いた。しかし至高神アンカリの奮闘もむなしく、悪しき魂はついぞ消えることはなかった。

業を煮やした至高神は捕らえた不吉さを森の奥深くへ押し込め、それを無数の風や虫たちの声の中にちりばめ、かたく封じ込めた。風は不吉さを遠くの大海へと運び、虫たちは歪んだ魂を地の底深くに引き摺り込んだ。森の奥深くは再び静けさに包まれ、至高神アンカリの慈悲と力の証がそこに残された。

よってアンカリの聖域、には幾人たりとも踏み入ることまかりならん。

其に踏み入る者、持ち帰ることまかりならん。

其に踏み入る者、生き帰ることまかりならん。

愚知の子らとその孫よ、敬虔なる心で其の音を畏れよ。

 

以上が、向こう二年程度に渡る『グレイ・ウォールズ』に関する顛末を、その一部始終をできる範囲で、“おれたち”なりに精一杯かき集めた資料群だ。

当然、これは起きた事象のすべてではない。表出したコンテクストは全体の一割にも満たないだろう。多かれ少なかれ、おれの主観によるバイアスも混ざっているに違いない。

それでも、ひとつだけ確かにわかっていることがある。

おれたちは、人類は、そう遠くないうちに敗北するだろう。

これが始まった当初から、「最前線」でそれを見ていたおれだからこそ断言できる。連中の戦略はあまりに狡猾で、そしてあまりにもおれたちの暮らしにぴったりフィットしていやがった。

だってそうじゃないか? すっかり錆びついていたおれたちの……ダグの音楽が大衆にウケるなんて、そんな奇跡みたいなことが、今さら起きるはずがないじゃないか? はじめから、信じるべきではなかったんだ。そんなありえない、夢みたいなことが……いや、よそう。恨み節を吐いたところで虚しくなるだけだ。

そう遠くない未来……いや、もう半分くらいはそうなってるかな? もうじき地上はやつらに――グレイ・ウォールズで埋め尽くされるだろう。どこもかしこも、うじゃうじゃと。

これを読んでいる者がいるとは思えないけど、一応、警告はしておく。グレイ・ウォールズに近づくな。とはいっても、今さら逃げる場所なんてないと思うが。精々、健闘を祈る。

……おれかい? おれはもう、駄目だろうな。

「マズい」と思った時点でダグたちからは距離を置いてたんだけど、だけど今の世の中の、いったいどこに安全な、“静かな”場所があるっていうんだ? 世界中、どこを逃げ回っても、どこもかしこも、ダグの作ったあの音が溢れていて……一か八か、根元から耳を引きちぎってみたけれど、それでも駄目だったよ。

あの単調なメロディは、今でもおれの中で鳴り続けているのさ。

はっきりと、くっきりと、心地よく。

 

――情報を送り出すには、人という容器に包んでやるのが一番いい/ロバート・オッペンハイマー

 

◆作者プロフィール

水町綜(みずまち・そう)

福岡出身。さだまさしのコンサートに行ったり愛用しているギターを修理に出すたびにショップから勝手に改造されるなど、すさまじいROCK力(ちから)を誇る。好きな向井秀徳は「これだラーメン」の調理に失敗する向井秀徳。